2019~20年に多発した医療事故と酷似したストーリー
匿名作者『脳外科医 竹田くん』(はてなブログ)
架空の病院である「赤池市民病院脳神経外科」を舞台にしている。「あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語」という副題が示すように、「手術テクニックがド下手にもかかわらず手術が大好きな脳外科医竹田くん」が主人公で、患者は高確率で死亡もしくは後遺症に苦しむ、という怖すぎるストーリーである。
現在、137話まで連載は続いているが、その内容は、兵庫県赤穂市に実在する赤穂市民病院で2019~20年に多発した医療事故と酷似していると言われる。描かれる手術や後遺症のエピソードも、同病院関係者が協力しているとしか思えないほどリアルだからである。
これまで「天才外科医」を主人公にした漫画は多数存在したが、本作のように「オペのド下手な外科医」は漫画の主人公になりえなかった。だが、現実には一定数存在しているだけに、医療の現場を知る者としては作者の視点を斬新だと感じる。
本作品は商用メディアではなく、匿名の作者がブログで連載しているが、「内容怖すぎ」「逆K2」「一気読みしてしまいました」とSNSで評判になり、一般メディアでも紹介されるようになった。一部では、赤穂市民病院で多発した医療事故の全容解明につながる漫画として期待されている。
そろそろ法整備を進めたほうがいいのではないか
本作を読んで筆者は日ごろの思いを強くしたことがある。長年、麻酔科医という仕事をしていて「神の手」クラスから「竹田くん」クラスまで、さまざまなレベルの外科医とチームを組んでの手術を経験しているが、そろそろ「ヤバい医師の解雇を可能」にする法整備を進めたほうがいいのではないかということだ。
漫画の舞台・赤池市民病院のような公立病院の医師は、地方公務員の立場だ。そして、現在の法律では「オペが下手」という理由で公務員医師を解雇することは不可能に近い。漫画には、竹田くんが院内安全委員会などによる手術禁止勧告で窓際ポストに追い込まれるシーンが出てくるが、現実にはそれすらも「上司のパワハラ」と逆告発されかねない風潮である。
また、「ヤブ外科医を窓際ポストで管理」するとしても、そういう問題医師にはマトモな転職先がないので定年までしがみ付くパターンが多く、医師定員を一人潰されて年齢相応の高給が発生し、他のまっとうな同僚医師の不満や辞職にもつながりやすい。
今の日本では最強ともいえる国家資格・医師免許があれば「予防接種:日給8万円」のような仕事はいとも簡単に見つかるので、病院をクビになった問題医師でも健康診断や予防接種などの業務をこなしていれば路頭に迷うことはない。
公務員っぽく「医療安全○○委員会」「○○報告書」などの会議参加や事務仕事を増やして、診察や手術で多忙を極める医師を疲弊させるよりも、「ダメ医師は速攻クビに」することが患者や同僚を守ることになる。
問題医師にとっても、窓際でダラダラと飼われ続けるよりも「さっさとクビにして、スキルに見合った新職場を探してもらう」ほうが、心機一転、プロとして正しい道に戻り復活できると筆者は信じている。