23時から3時に寝ていることが元気の秘訣

ひと昔前に、“22時から2時の間は成長ホルモンがたくさん出る睡眠のゴールデンタイム”という考え方が話題になりましたね。でも、実はこれは誤解で、現在定説になっているのは、“成長ホルモンは、寝ついてから約1~2時間後の間に最も多く分泌される”というものです。

では、先ほど私が理想だとお伝えした23時から3時に寝ているとなぜよいのでしょうか。それには中医学の気とけつの概念が関連しています。

私たちが日中に元気に活動できるのは、気というものが体の表面を巡り、体を外敵から守るとともに、体を温めてくれるからです。夜になって私たちが眠りにつくと、気は体内を巡り、臓腑の調整や修復を行います。

ですから、睡眠を十分にとらないと、体力を回復できないばかりか、臓腑の働きも悪くなってしまうのです。

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さらに、睡眠に大きく影響するのが血です。“(かん)”という臓腑は血を蓄え、体の各部に必要な量の血を送っているのですが、感情、想像、夢想、思考、評価、意志などといった比較的高度な精神活動も担っています。

ですから、血が不足すると肝が十分に働けなくなり、そうした精神活動がうまく行えず、メンタルが不安定になります。メンタルが不安定なせいで眠れないというのは多くの方に経験があると思いますが、血はそれだけ睡眠と密接に関係するのです。

肝が活発に働くのは午前1時から3時です。その時間にきちんと眠っていれば、肝に血が集まるので精神が安定しますが、午前1時を過ぎても眠らず活動していると、肝に血が集まらないので精神が不安定になってしまいます。

また、その前の23時から1時は、肝を補佐して働く“(たん)”という臓腑が活発に働く時間で、23時以降に活動することも精神を興奮させ、眠りを妨げます。

つまり、夜更かしを続けていると、いざ寝ても眠りが浅くなってしまうし、そのせいでメンタルもさらに不安定になっていく……という悪循環が起こります。

だからこそ、何時に寝ているかが、よい睡眠のために重要なのです。ぐっすりと眠り、体と心を元気に保つためにも、できるだけ早く寝てください。

横になって10~20分で眠るのが理想的、バタンキューは要注意

改めて、よい眠りとはどんなものでしょう。眠りに関しては、漢方相談者さんのお話を聞いていても、いろいろと誤解されている場合が多くあります。

例えば、「秒で眠れます」と自信満々におっしゃる方がいますが、これが快眠とイコールかというと、必ずしもそうではありません。

“バタンキュー”と、横になったとたん気絶するように眠ってしまい、その前の記憶がほとんどないようなら、それは疲れすぎ。心身に大きな負担がかかっているので、スケジュールの見直しが必要です。

逆に、「途中で一度目が覚めてしまうから、睡眠の質が悪いのかも」と心配する方もいらっしゃいますが、途中で目が覚めてもまたすぐに眠れて、朝はすっきり起きられるなら、特に質の悪い睡眠ではありません。

普段、私が相談者さんに話を聞く時、睡眠に関して確認している内容をもとに、よい睡眠・悪い睡眠のチェックリストを作りました。あなたの睡眠はどうか、快眠といえるのか、眠りの質が悪くなっていないか、を確認してみましょう。

【よい睡眠(眠りの質がよい)】
☑横になって10~20分以内に眠れる
(ただし、布団に入ってすぐ気絶するように眠るのではなく、横になり目をつぶって静かにしていたら、いつのまにか眠っているという状態)
☑夜中に何度も目が覚めない
(目が覚めるとしても1回程度で、その後もすぐ眠れる)
☑夢を覚えていない
☑朝すっきり起きられる
【悪い睡眠(眠りの質が悪い)】
☑布団に入って30分以上寝つけない
☑布団に入るとすぐに気絶したように寝落ちする
☑1回でなく、何度も目が覚めて、その後なかなか眠れない
☑よく夢を見る、夢の内容を覚えている、悪夢を見る
☑朝から体がだる重い