5%セールスはGEP客を「相手にしない」

5%セールスは、自らが編み出した再現性の高いルールをもとに初期対応します。

精密機器メーカーの5%セールスは、法人企業を顧客として多くの案件を対応しても、成約率は20%くらいだと教えてくれました。なぜ商談が成功したか、あるいは、なぜ失敗したかをしっかり振り返り、良かった点と改善点をまとめてパターン化していました。

ITベンチャー企業の5%セールスは、最初に価格を提示しないパターンを持っています。価格を提示すると足元を見られるので、はじめは同業他社の事例を紹介して、それから顧客に対するメリットとデメリットの提示をして、質疑応答の後に価格を出すというパターンを持っていました。

こうしたパターンが複数あり、相手に合わせて使い分けているのです。

たとえば、お客さんが早口で電話してきたり、短い文章のメールやチャットで問い合わせをしてきたりしたら、それは緊急性が高いときなので、10分以内に返答する。

流通業の5%セールスは、こうした迅速な対応で何度も大きな駆け込み案件を獲得したそうです。このように、過去の経験をもとに自分で編み出したパターンを複数用意して、使い分けることで初動が早くなります。うまくいかなかったら、そのパターンの対処法を修正して、その後の成約率を高めていくのです。

また、5%セールスは商談に入る前に、「手を抜く相手」を決めています。

これは、重要な商談に注力することを意味します。5%セールスにヒアリングする中で、GEPというキーワードを初めて聞きました。GEPとはGood Enough Perceptionの頭文字で、「十分満足の人」を意味します。現状で問題を感じず、将来に向けた課題もない人、つまり「何も必要とせず、購入しない人」です。

こうしたGEP客が問い合わせをしてきたり、展示会に足を運んだりします。GEP客は購入意思がないにも関わらず、何かを検討しているかのように見せて、アプローチしてくるのです。

なぜならGEP客は時間が余っているからです。時間を持て余しており、情報収集するという名目で展示会をふらふらしています。所属する会社で影響力を持っていませんので、対応しても成果にはつながりません。

GEP客は、自分の優越感を得るためにセールスにコンタクトをとってきます。専門知識を持っているという自信がある人や、過去に偉大な功績を残した人は、マウンティングするためにセールスに近づいてきます。

写真=iStock.com/Yuuji
※写真はイメージです

もしそのGEP客に購買の意思決定権があったとしても、優越感を得ることを優先しているので、最終的には、取引歴が長く何でも言うことを聞いてくれる業者を選定します。このように、GEP客は客の素振りをしているだけで購入はしません。よって、手間をかけずにスルーすれば良いのです。

5%セールスは、このGEP客を見抜きます。関係のない質問をしてきたり、感想だけ述べてきたり、マウンティングしてきたりする人を疑い、「購入する意思はありますでしょうか?」とストレートに聞いていました。

成果を出し続けるためには、新規顧客は欲しい。しかし、買わない人に時間を使うのは浪費です。5%セールスは、嫌われることを覚悟で勇気をもって購買意思を聞き、GEP客から逃げているのです。