より多くの被災者を救済したい気持ちは分かるが…

――被災者は、住家が被害を受けたと認定されて、はじめて公的な支援が受けられます。広く支援するための措置なのではないですか?

もちろんたくさんの被災者を支援するために認定基準を変えたというのは分かります。行政の担当者も被災者を広く救援するために運用している。被災者を救いたいという思いも痛いほど理解できる。

武村雅之『関東大震災がつくった東京』(中央公論新社)

ただ、その場その場の判断で基準を変えていると、過去からの連続性が失われてしまうのではないかと危惧を抱かざるをえません。

なぜ、全壊家屋が増えたのか、耐震設計にどんな問題点があるのか、どう改善すべきなのか、統計から読み取れなくなってしまう。

客観的なデータを残す作業と、被災者の救済は本来、別でしょう。家屋被害の認定基準や定義は変えずに被災者を救済する法律を改めて整備すべきなのです。

次の時代に客観的なデータを残していく。現代は自然災害を前にしたときにもっとも大切にすべき意識が薄れている気がします。関東大震災当時の人たちが、データを残していてくれたからこそ、100年後のいまも被害を多角的に検証できるわけですから。

(第2回へ続く)

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