同社は新卒として入社した後、10年間は育成期間として位置づけ、同期社員を昇格の面で差をつけないことにした。初めの4年間は「基幹職C級」、その後6年間を「基幹職B級」とし、主任の扱いとする。この期間を終える頃に、“高い成果を生み出すことができる自責型人材”に育っていることを目指す。

「激変する時代でも高い成果を生み出すことができる、揺るぎない力を身につけさせたかった。そのためにみっちりと基本を体得する期間を設けた」(遠藤氏)

この制度により、配置転換もスムーズに行えるようになったという。同社は7つの事業部で成り立っているが、以前は入社して10年以内でも優秀な社員は、その部でいわば囲い込みになることがあったようだ。これは、事業部制の大企業で頻繁に耳にする話である。

だが、この制度を始めると、10年間は昇格に差がつかないために、この問題は解消されつつあるという。こう考えると、この制度のねらいは、潜在能力の高い若手社員の離職防止や、モラールを高める意味もおそらくあるのだろう。

ここまでのいきさつを聞くと、かつての年功序列型の制度に戻したかのように思えなくもない。だが、実はそうではない。例えば、年に2回支給される賞与においては、上司の人事評価をもとに厳格な査定を行い、しっかり差を設けている。それを踏まえると、すべての社員の底上げをしながらもインセンティブを与え、競争心を刺激していくという意味で、厳しい「年功的能力主義」といえる。

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SC VALUESアセスメント

図は、この10年の間、社員を査定する人事考課シートの一部である。同社では、本人と上司が話し合い、キャリア形成を考えるという観点から「人材アセスメントシート」と呼ぶ。直属上司が1次考課者となり、それに2次考課者として本部長などの上席者が加わる。

シート1(現状レビュー)の主な評価項目は9つあり、それらが会社として重きを置く順番で並んでいる。まず1として「信用・確実」、2に「総合力」(円滑なコミュニケーションとチームワーク)、3に「ビジョン」と続く。意外なことに、「人材開発」(能力開発を意味する)や「プロフェッショナル」(高度な専門性とスキルを身につける)が8、9と後のほうの順位に並ぶ。

このあたりが、同社の人材育成の1つの特徴といえる。あくまで「住友パーソン」を養成しようとしているのだ。