同社は違う。社員(正社員)には半年ごとに評価が下される。ランクは5段階で評価の高い順からS、A、B、C、D。期間の初めには、上司(考課者)にシートを通じて目標を自己申告する。シートには「今期の目標」という項目があり、そこに3つほど、それぞれ150~200字程度書き込む。これらは人事部でデータ化・保存され、全社員がパソコンを通じて閲覧できる。「目標を宣言することで、それをやり抜いてもらうことが狙い」(青野氏)なのだ。

目標は、数字を盛り込むなどして具体的であること、それが会社や上司の期待や考えに沿える水準であることが求められる。安易に達成できる目標を申告していては、意欲そのものを疑われてしまう。

目標を確実に達成するために、3カ月ごとに上司との面談が1時間ほど設けられ、そこですり合わせがなされる。上司がその時点での“実績”を確認したうえで部下を誘導する。この面談の場は、20年近く勤務する青野氏ですら疲労を覚えるという。お互いに相当踏み込んで話し合うためである。青野氏が言う。

「成果を出してこそプロだが、成果以外でどう評価するかは難しい。ただ、頭角を現すのは商売に飽くなき執念を持っている人。逆に、仕事を自分で見つけ、対応していくことができない人や、会社に頼り切る人はいづらいはずだ」

年功序列制度に戻したのではない

年功・能力主義的な要素を残しつつ、競争原理の導入を図る企業もある。

「早期選抜よりも全員の活性化に重きを置いた。ただし、同期社員の間で賞与の額はかなり差がつくようになっている」

住友商事人事部長の遠藤貴也氏は、一部のメディアで“年功序列”と報じられた30代前半までの人事制度について切り出した。