EPAのサプリを摂ると炎症が軽減する

では身体のために、どんな脂肪の摂り方をすればいいのだろうか?

食事のときに多価不飽和脂肪酸を摂らないようにするのはもちろんだが(たとえば、サラダのドレッシングにちょくちょく隠れているグレープシード油は、オメガ6系とオメガ3系の割合が700対1だ!)、オメガ3系を多く含む自然食品をたくさん食べるようにしよう。具体的には先述した天然の魚や、放し飼いの鶏の卵、牧草飼育(グラスフェッド)や放牧飼育(パスチャーレイズド)の食肉にこだわることだ。このような食品にはオメガ3系がたくさん含まれているが、オメガ6系は少ない。

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もし魚が嫌いなら、あるいは週に2、3回食べることが難しいなら、高品質の魚油のサプリメントを摂ることも検討しよう。オハイオ州立大学の研究によると、抗炎症作用のあるEPAの魚油を1日あたり2085ミリグラム摂った学生は、特定の炎症マーカーが14パーセント減少したという(これは彼らが抱えていた不安の度合いが、同時に20パーセント軽減したことを意味する)。

DHAは脳を回復させる「肥料」

オメガ3系脂肪酸、とりわけDHAは「脳由来神経栄養因子(BDNF)」というタンパク質を増やすことによって、脳をじかに支えている。

脳の奇跡の肥料といわれるBDNFは、記憶の中枢の神経細胞の新生を促すだけでなく、今ある神経細胞が生き延びられるように助けるボディガードでもある。シャーレ(ペトリ皿)の神経細胞にBDNFを振りかけると、その驚くべきパワーを見ることができる。何かを学んだり覚えたりしたときに神経細胞から伸びるトゲ状の物質──樹状突起が、伸びるのだ。

BDNFの量が増えると、短期間で記憶力や気分、実行機能が改善され、脳の長期的な可塑性も強化される。「可塑性」という言葉は、脳の変化する働きを表す神経科学の用語だ。アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患ではこの可塑性の働きが衰えるが、BDNFも減少する。実際に、アルツハイマー病を発症した脳には、健康な脳の半分のBDNFしかないこともあり、その量も簡単には増えないという。うつ病は、BDNFが減るために生じるともいわれており、BDNFを増やすと症状も改善する。

神経細胞を保護して成長させる、この強力なホルモンを増やす最善策の1つが運動だ。一方、食生活では、オメガ3系脂肪酸のDHAを摂取することが最善策だと言われている。DHAは健康な脳を構築するための重要な成分で、研究者は人類の脳が初期のヒト科から現在の大きさになったのは、この特別な脂肪のおかげだと考えている。魚を食べることによってDHAを含むオメガ3系の血中濃度が高くなると、徐々に脳の体積が増加するのはこれが理由かもしれない。だがDHAの親友、EPAも忘れてはいけない。炎症は脳のBDNFを枯渇させることがわかっているが、EPAがその炎症を強力に抑制してくれるのだ。