あまりに妄想がひどく、学校生活を送れない状態

今でこそ発達障害などで若い年齢の患者さんが入院することは珍しくありませんが、当時はまだ10代前半の患者さんが入院するのはとても珍しいことでした。

そのような若い年齢の患者さんが宇宙規模や世界規模のあり得ないような妄想を絶えずブツブツとつぶやきながら、ひどい陽性症状で保護室に入れられたのです。

周囲に暴力を振るったり暴れたりするタイプの症状ではありませんでしたが、あまりに妄想がひどく、学校生活を送れるような状態ではありませんでした。

24時間見守っていないと、自分自身をひどく傷つけてしまうリスクもありました。

そのため妄想がある程度治まるまでは、保護室でしっかり薬を飲んでもらうことが必要でした。

その患者さんはしばらく保護室で過ごしたあとに、症状が落ち着いたことを確認してから大部屋へ移動し、やがて退院していきました。

基本的に一生付き合っていかなければならない病気

若い患者さんはあまり長く入院はさせないことが多いので、それほど長期の入院ではなかったと記憶しています。

また両親がきちんと投薬管理をしていたようで、退院後に再入院してくることはありませんでした。

しかし統合失調症は治療によって症状が落ち着いても、基本的に一生付き合っていかなければならない病気です。

西島暁子『魂の精神科訪問看護』(幻冬舎)

患者さんは退院後も服薬を継続していないと、普通の生活を送ることが難しい場合が大半です。

まだ10代前半の若さで重度の統合失調症を発症した患者が、その後の人生で困難を抱えることは想像に難くありません。

若い患者さんの場合、自分が原因で病気になったのではない可能性も高いとも考えられます。

なぜこの若さで発症してしまったのか、このあといったいどうなるのか、私はその患者さんのことがその後も頭から離れませんでした。

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