人間社会が変化しようと山に潜むリスクは不変

青天の霹靂ともいえる新型コロナウイルスの出現によって、私たちはどう山と向き合っていくべきかを改めて考えさせられた。この先、コロナ禍によって世界がどうなっていくのかは不透明であり、それ次第で登山のあり方も、我々の山との向き合い方もまた変わっていくのかもしれない。それでも私たちは、手段や方法を変えて山を楽しもうとするだろう。

ただ、そうした変容のなかでも、山に潜んでいるリスクは、昔も今も未来も、おそらく変わらない。大事なのは、標高の高低や季節に関係なく、どんな山にもリスクが存在することを認識し、それぞれのリスクについて知ることだ。

「自分の力量に見合った山を選ぶ」という言葉の本当の意味

羽根田治『山のリスクとどう向き合うか 山岳遭難の「今」と対処の仕方』(平凡社新書)

登山は、実際にやってみればわかるが、単なるレジャー、スポーツではなく、体に大きな負荷がかかる、かなり過酷なアクティビティである。そのうえあちこちにリスクが潜んでいるのだから、ちょっとしたミスが命取りになることもある。登山をはじめたばかりの人はもちろん、それなりの経験がある人も、そのことをしっかりと心に留めておくべきだろう。

仕方のないことかもしれないが、ビギナーはその認識が欠けがちである。逆にベテランを自認する人たちには、油断や慢心が生じやすく、ともすれば自分の体力や技術を過信してしまうことがある。

大事なのは、山にも自分にも、謙虚に向き合うことだ。そうすれば、山に潜んでいるリスクを正しく理解でき、対処・回避もしやすくなる。それが、近年よくいわれている「自分の力量に見合った山を選ぶ」ということにつながるのだと思う。

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