山で遭難してしまう人にはどんな特徴があるのか。ノンフィクションライターの羽根田治さんは「警察や消防には、登山者から『疲れて歩けなくなった』といったお粗末な救助要請が数多く入る。登山の経験が乏しい人、自分の体力・技術レベルを把握できていない人が遭難するケースが目立つ」という――。
※本稿は、羽根田治『山のリスクとどう向き合うか 山岳遭難の「今」と対処の仕方』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。
コロナ禍以来、3年ぶりに登山者数が戻ってきた2022年
2022年、新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動制限がなくなったことで、休業を続けていた南アルプス南部の山小屋は3年ぶりに営業を再開し、富士山も前年に続いて山開きを行った。
登山地図アプリを運営するヤマップが利用者を対象とした調査では、この年の7月~8月に登山のために移動した距離は、コロナ禍前と同じ水準にまで回復しており、登山者の動きが活発になったことがうかがえる。
都道府県別の登山者数は、富士山や日本アルプスなどの高い山を訪れる登山者が増えたためか、前年と比較して山梨、長野、静岡の3県で最も増加した。ただし、標高2500メートル以上の山を訪れた登山者は、前年を上回ったものの、コロナ禍前の水準にはもどらなかったという。
また、長野県警が発表した夏山期間中(7月1日~8月31日)の山岳遭難の発生状況によると、北アルプスをはじめとする各山域で、天気のいい週末を中心に多くの登山者で賑わったが、遭難発生件数100件、遭難者110人で、コロナ禍でいずれも最多となった。遭難者のほとんどは県外者であり、山域別に見ると北アルプスや八ヶ岳など標高の高い山での遭難が約9割を占める。事故要因については転倒が3割強と最も多く、3割を占めた疲労・病気がそれに続いた。