「疲れて歩けない」「ライトがつかない」呆れた富士登山客

そしてとりわけひどかったのが富士山だ。2022年夏の富士山では、ほぼ毎日のように事故が起きた。そのいくつかを次に記す。

・7月18日 男性と2人で富士山の御殿場ルートを下山していた26歳の女性が、できた靴擦れを庇いながら歩いていたところ、ほかの箇所も痛めてしまい、歩けなくなって救助を要請した。警察と消防に無事救助される。

・7月26日 午後10時前、中国籍の28歳の男性単独行者が、「富士山を登山中に道に迷った。辺りが真っ暗でどこにいるかわからない」と救助を要請。携帯電話のGPS位置情報により、男性は御殿場ルートの登山道上にいることが判明し、出動した救助隊といっしょに下山した。ライトは携行していたが、点灯しなくなってしまったという。

・7月29日 単独の70歳男性が、御殿場ルートを下山中に「疲労で動けない」と110番通報し、出動した救助隊員に付き添われていっしょに下山した。男性はその後、自力で帰宅した。

・8月8日 子供2人と須走ルートから山頂を目指した40歳男性が、九合目付近で登頂を断念して下山する途中、両膝が痛くなって歩けなくなり119番に通報。連絡を受けた警察が、山小屋などに物資を上げる民間ブルドーザーの出動を依頼し、男性を救助した。

・8月28日 単独の66歳男性が富士宮ルートを元祖七合目まで登ったのち、体調が悪くなったため下山を開始。新七合目まで5時間かけて下山したものの、長時間雨風にさらされたため低体温症に陥り、救助を要請した。男性は救助隊員によって担架で運ばれたのち、病院に搬送された。

・8月29日 富士宮ルートを下山していた4人パーティのなかの61歳女性が、元祖七合目付近で岩の間に左足を挟み、足首を捻る。女性は防災ヘリで救助され、病院に運ばれた。

以上はほんの一例であり、「疲れて歩けなくなった」「転んでケガをした」「寒くて動けなくなった」といった救助要請が、次々と警察や消防に舞い込んだ。それぞれの事例の詳細がわからないので、もしかしたらやむをえない事情があったのかもしれないが、報道をみるかぎり、お粗末な印象を拭えない事例が多すぎる。富士山の遭難救助では、前出のブルドーザーの使用が見込めるという利点はあるものの、こんな状況では警察や消防はたまったものではないだろう。