缶詰であれば、EPAやDHAが酸化されていない

酸化に加えてもう一つ、干物のデメリットは塩分の多さだ。干す前に魚を塩水に漬けることが多いため、どうしても過剰な塩分摂取になってしまう。例えばマアジ(生)なら100グラムあたりの食塩相当量が0・3グラムだが、開いて干すと2グラムにも。

「干物の良さは、保存が利くこと。ビタミンDが多いことの2点のみ。けれども保存食であれば、サバ、イワシ、ツナなどの缶詰のほうがいいと思います。もちろんこちらも塩分は高いのですが、EPAやDHA(オメガ3)が酸化されていませんし、缶汁ごと野菜にかければ汁に流れ出たオメガ3も取ることができます。そういった食べ方なら、野菜には塩分排出を促すカリウムが豊富ですので、デメリットを消すこともできます」(望月氏)

同じようにどうしても干物が食べたいなら、レモン汁をかけるなど抗酸化成分を合わせて摂取すれば多少は緩和されるかもしれない。また金目鯛のような白身魚は脂質が少なく、オメガ3の効能がほとんどないかわりに酸化しにくいので、白身魚の干物を選ぶのもいいだろう。

栄養素を失わない調理法としてベストは刺身

調理法として、酸化と塩分過多の点から干物はお勧めできないが、フライもまた「糖化」という観点からNG。糖化とは、食品に含まれるタンパク質と糖質と結びついて劣化する反応のことで、その時、AGEという悪玉物質が発生する。

AGEは高温加熱による調理過程で生まれるのだが、多量に摂取すると、その一部が体内に蓄積し、悪影響をおよぼす。例えば肌が黄色っぽくくすんでくるのは、AGEが茶褐色の物質のため。肌の奥にAGEがたまれば、コラーゲン繊維の機能が低下し、硬い皮膚になったりシワができやすくなったりする。

「アジを例にすると、アジフライであれば衣がついているから酸化はしにくいですが、糖化はします。美容健康の観点から、栄養素を失わない調理法としてベストは刺身。二番目は蒸す(ホイル焼き)。次に煮る(味噌煮など)、四つ目が焼く、最後に揚げるの順です」(堀氏)

写真=iStock.com/ahirao_photo
※写真はイメージです

健康には質のいい油をフレッシュな状態で取ることが重要で、生の魚が一番。油というと何となく体に悪そうに感じるが、油は老化を防ぐために最も有効といってもいい。細胞膜やさまざまなホルモンの材料となり、体の内側はもちろん、皮膚や髪の毛のツヤ、ハリを保つために欠かせない。

「年齢を重ねるほど体から油が減り、老人性湿疹やシミなどにもつながりやすくなります。油不足は肌の新陳代謝の遅れやバリア機能の低下を招きます」(望月氏)

特にそれぞれの魚の旬の時期は脂肪がのる、つまりオメガ3が豊富に含まれる。今の時期であれば5月初旬に水揚げされる初ガツオがいいだろう。秋に南下する戻りガツオと比べるとオメガ3が少ないが、そのぶんさっぱりしておいしい。今晩のメニューにぜひ。

▼この連載について

筆者は、2017年~18年、『週刊文春』で「老けない最強食」という特集シリーズを取材執筆した。5年前のことだが、当時は「老ける」「老けない」の視点で食べものを取り上げる記事がほとんどなかった。食の記事といえば、「ある食べものが○○に効く」というものが多く、また複数の専門家が解説する記事も珍しかった。

そういう中で同シリーズは50人近くの専門家の協力を得て、老けないための食事を多角的に、そして科学的に比較検討した。肉、魚、野菜など食品群ごとに記したため、「わかりやすい」などと読者から数百通ものお便りをいただき、また私自身も食を選ぶ目が培われた。

この連載では、当時の取材で得た知識をもとに、最新の食品栄養成分や研究の状況を記事に盛り込んでいる。いずれも、「その食べものが本当に身体にいいのか?」という視点でまとめている。ぜひ参考にしてほしい。(第2回に続く)

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