私はこれらの企業の証券をどれも持っていなくてよかったと思います。もし、愚かにも債券は安全だと信じていたならば、今ごろ大損をしていたでしょうね。実際に大損したファンドや富裕層はたくさんいると聞きます。

もちろん、このような事態は良いことではありませんし、スイス政府が通常機能する方法ではないことは確かです。「ショック」というより、「暴虐」と言ってもいいくらいです。

米利上げとインフレ

2024年からインフレが再開する

ウクライナ危機や新型コロナウイルスの感染拡大による中国の都市封鎖の影響で、世界中でインフレーションが加速しました。止まらない物価高を食い止めるため、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、過去12カ月間で最大の利上げに踏み切りました。

しかし、FRBによる繰り返しの利上げが、SVBの破綻に影響を与えたと言われています。

今後、FRBが利上げを緩めるのか、それとも23年中に利下げを開始するかが注目されているのです。

中央銀行は、愚かにも楽な政策を取りたがります。つまり利下げをしたがるということです。「今の状況は大丈夫だ」と言って、できるだけ早く、利上げにブレーキを踏もうとしているのです。

残念ながら、中央銀行家のほとんどは、市場の仕組みについて実際のところ無知であるのです。米財務長官のジャネット・イエレン氏が言うように、本当にインフレ問題が過去のものだとするならば、私の考えでは、しばらくの間はインフレ率が低い状態が続くはずです。

しかし最終的に、24年には、再びインフレに見舞われるでしょう。金利も再上昇し、そのときに起こる弱気市場は、すべての人にとって非常に悪い影響をもたらすでしょう。アメリカだけでなく、日本でさえも打撃を受けることになります。

約40年前、当時のFRB議長のポール・ボルカーという人物はインフレを抑制したと言われています。ボルカー氏は、当時のジミー・カーター大統領に対して「インフレ問題は非常に深刻で、大胆な施策が必要だ」と訴えました。カーター大統領は、ボルカー氏を守る代わりに、この問題を終わらせるよう返事をしたそうです。

ボルカー氏は、FRB議長就任後、すぐに金融引き締め策を始めました。当時のアメリカの短期国債の金利は、約20%まで上昇したのです。カーター大統領は再任されませんでしたが、インフレ問題は解決されました。

当時の金利に比べると、今の金利は非常に低いですが、インフレは当時と比べると非常に深刻で、悪い状況にあります。懸念すべきであることは間違いないでしょう。米国のインフレ率は、23年後半は鈍化する可能性があります。少なくとも、報告されている数字は、すでに少し下がっています。

この数字を見て、中央銀行はしばらく満足するでしょう。今の中央銀行家は、この問題を理解していると思い込んでいます。物価がそれほど早く上がっていないことも一因です。しかし、いずれインフレは戻ってきます。