CASE2
家事や育児に不満を募らせる妻を実母になじった夫
来春に小学校に上がる子供を育てるシングルファーザーDさん(43歳)は、2年前に4歳年下の妻と離婚。表向きは「性格の不一致」だったものの、Dさん夫婦が離婚に至った本当の理由は、家事や育児の負担の大きさに妻が疲弊し、けんかが絶えなくなった結果だという。
新婚当初、子供が生まれる前は「学生時代からひとり暮らしを経験しているので、家事には自信がある」「家事や育児には自分も積極的に参加させてほしいから等分にしよう」などと宣言していたDさんは、結婚後、自分の仕事が忙しくなったことを言い訳に家事や育児を妻にまかせっきりになったのも事実。
「実際、結婚している時はゴミ出しくらいしかやらなかったし、子供のオムツもひとりでは取り替えたことはありませんでした」
妻は在宅でできる仕事だったため、必然的に家事や育児のほとんどを担う形になった。それについて「話が違う」「外で働くほうが何十倍も楽に違いない」と妻から不平不満をぶつけられるたびに、「お前より稼いでいるのに文句を言うな」「オレだってできる限り手伝っている」などとDさんも苦しい言い訳を続け、夫婦仲は次第に険悪になっていったのだった。
夫婦関係の悪化を加速させる原因はほかにもあった。都内の邸宅でひとり暮らしをしているDさんの母親の存在だ。
「はじめは孫の様子を知りたくてかかってきた電話のついでに、何の気なしに妻のグチを伝えたことがありました。その日を境に、母親にとって妻は完全に“悪者”。『家事や育児は女の仕事。それを放棄して夫に押し付けるなんて母親としても妻としても失格ね』『仕事で疲れているのに、家庭でも休まらないなんてかわいそう。お母さんがそばにいてあげることができたら、あなたをそんな目に遭わせないのに』などと、日を追うごとに母親の妻に対する評価の厳しさはエスカレートしていきました」
ある時、ついに母親はDさんにこう提案した。「そんなにつらいなら、もうあんな女とは別れちゃいなさいよ。息子と孫の世話くらい、お母さんがやってあげるわ。実家に帰ってくれば家賃も要らないわよ」。母親のその言葉で、Dさんは妻との離婚を決意したという。
「その頃にはすでに、妻との連日の言い争いに疲れ果てていたこともあり、家事と育児をまかせられる母親がいる実家に住めることがベストな選択だと思っていました。自分自身の次の幸せのためにも、新たなスタートを切る覚悟が高まっていきました」
結局、Dさんは実家の力もあって、親権と養育権を持ち離婚。肩書はシングルファーザーだったが、家事や育児は全面的に母親にまかせ、自分は仕事に集中しようとした矢先、事態は急変した。
「子供と二人、実家に戻って1カ月もたたないうちに、母親が急逝してしまったんです。気がつけば自分に残されたのは、持て余すほど大きな家と子供だけ。これから先のことを想像して愕然としました」
頼りにしていた母親という大きな後ろ盾を失ったDさんは、しばらく心療内科に通うほど落ち込んだものの、現在は仕事と家事と育児に忙しく奮闘する毎日とのこと。「まだ要領が悪く、毎朝4時半に起きて子供の弁当を作り、朝食を作って食べさせて、園まで送り届けてから出勤しています。幸い、夕方以降は近所に住む妹夫婦がサポートしてくれていますが、こうなるとわかっていたら、あの時、絶対に離婚しませんでした」