「会社のせいで」は成長を止める口癖

山本さんの例で学べることは、もう1つあります。それは「○○のせい」という他責の念を捨て、自責で生きるということです。本来、マーケティングをやりたかったのに、ずっと違う分野で働いてきた違和感を拭いきれなかった山本さんですが、「会社のせい」にしなかったことが見事でした。転職支援の現場にいると、自社の悪口を延々と繰り返す人も、よくいるんです。そうした人の転職・独立動機は極めて単純です。「自分の望む生き方を会社が叶えてくれないから離職する」という動機です。これは山本さんの副業動機とは、似て非なるものです。

会社と個人の関係は、ギブ&テイクです。会社から報酬や成長の機会を与えてもらう代わりに、仕事の成果を返す。それが本来の関係性であるべきなのに、後者のテイクを提供せず、会社からのギブだけを待っている間は、社内でも社外でも活躍できる人材とはなりません。

今いる職場が気に入らないから転職する、フリーランスになる。こういう人が次のステップを求めても、大抵うまくいきません。次の職場ではまた新たな文句を羅列して、「自分はもっとできるのに」と自説を繰り返すことでしょう。今いる場所で、自ら成長の機会を求めることなく、ただただ評価してもらうことだけを求めている、「青い鳥症候群」の特徴です。

人生100年時代に欠かせないのは、自分の人生を自分の足で歩む覚悟です。人生にレールは敷かれておらず、自ら1本1本敷いていかなくてはならないのは、仕事においても同じことなのです。

ステップアップにつながらない副業

しかし、社外に出さえすればなんだっていい、というわけでもありません。ざっくりと社外に出る方法の優先順位をつけるとすると、以下のようになります。

①フリーランス >  ②「ホワイト副業」 > ③ボランティア

ここで1つ注意をしておきたいのは、まったく自分の専門外の分野で副業などをしても、ステップアップには結び付かないという点です。例えば、自分はメーカーに勤めているのに、副業として簡単な動画編集や飲食店の出前的なギグワークをやってみようという人がいます。単純に「お金を稼ぎたいから」なら、それでもいいのかもしれません。

でも、将来的に第二の人生を歩むためのスキルアップを目指すなら、自分の領域を広げたり深めたりする仕事でなければ、意味がありません。自分しかできない価値を提供できるような「副業」「プロボノ」「ボランティア」を選ぶべきなのです。

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その際、報酬の多い少ないは、関係ありません。むしろ大切なのは、自分の専門分野のスキルを提供することで、「誰かが喜んでくれる体験」を持つことです。自分が主体的に動きアイデアを出すことで、誰かを幸せにできたら、それはかけがえのない喜びになるはずです。