金融緩和をやめればデフレに逆戻り

物価上昇を抑える方策としてすぐに思い浮かぶのが政策金利の引き上げに代表される金融引き締めだ。

既に欧米をはじめ各国は異例なハイペースでの利上げを実施している。

黒田総裁の後任として植田和男氏の名前があがっているが、新体制に黒田路線からの脱却を望む声もある。

しかし、欧米が利上げをしているから日本もすべきだ、という発想はあまりにも稚拙だと言わざるを得ない。

国民が体感する物価は高い。だが、金融政策を決める際に参照すべき物価水準はまだ低位のままだ。

米国でコアCPIとして利用されている「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」のデータでは、前年同月比+1.6%。つまり日本の「(米国基準の)コアCPI」はまだ2%に届いていないのだ。

また、国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは、2022年10~12月期のデータが前年同期比+1.1%と、ようやく3四半期ぶりにプラスになったというレベルだ。

海外起因のインフレ要因が剝落すれば、GDPデフレーターは再びデフレ水準に低下するだろう。いまの日本経済が安定的に2%の物価上昇率を維持する段階にないことは容易に理解できる。

写真=iStock.com/Ca-ssis
金融緩和をやめればデフレに逆戻り(※写真はイメージです)

既に米国ではインフレがピークアウトしており、欧州各国もいよいよピークアウトの兆候も見られる。

そんな中、日銀が新体制下で拙速な出口戦略をとれば、日本経済には逆風となろう。