「伝え手、読みのプロ」から「女性タレントの代用」へ

ところがいまや状況はまったく変わってしまいました。女性アナウンサーという職業の“位置付け”自体が大きく変化してきたのだと思います。

かつては局に所属する「伝え手、読みのプロ」としての職人の役割が重視され、「技術を身につけさせたあとでないと恥ずかしくて表に出せない」という考え方で教育がなされていました。

それがいまや「手軽に使えて、出演料もかからないサブスクタレント」のように扱われるようになってしまいました。月給はかかりますが、番組ごとの出演料はいらないわけですから、まさに「定額制」と言えますよね。

前項でも少し書きましたが、番組制作費が減る一方の状況で、「女性タレントの代用としてお金がかからない女性アナを起用しよう」という風潮が強くなっています。となれば、できるだけ若くて新鮮味があるうちに画面に出演させようということになって、いまや入社直後から大きな番組のサブMCを務めるようなケースも増えてきました。

たとえば私の古巣であるテレビ朝日でも、『ミュージックステーション』のアシスタントにいきなり新人女性アナを起用するのがもはや定番化しています。

tv-asahi』HPより

入社直後がいちばんの旬で、経験はさほど重視されない

ということで、女性アナは、いまや「入社即戦力」を求められています。

長期間の訓練などしている余裕は、どんどんなくなってきていますから、学生時代にアナウンススクールに通うのは当然のこととして、アイドルグループの所属経験や子役経験があるような人材が採用されるケースが増えているわけです。

そして、サブスクタレントですから、人気があるうちはガンガン出演させられることとなり、けっこうブラックな職場です。気をつけないと、からだや心を病んでしまいがちです。そして入社すぐにこき使われるわけですから、そんなに教育をしてもらえず、実力を蓄えているヒマもあまりありません。

そしてハッと気づくと、より若い後輩たちに仕事がいくようになり、自分の出演はだんだん減ってきている……という、厳しい言い方をすれば「入社直後がいちばんの旬で、経験はさほど重視されない」状況になりつつあります。

女性たちが男性と変わらず働けて、男女平等に活躍できるように、ということが重要な課題となっているいまの日本で、なんとも時代錯誤な話ですよね。これでは女性アナたちがイヤになって辞めていくのも無理はありません。