皇位継承を議論するうえで重要な報告書

そして、今後の皇位継承については、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(座長・清家篤前慶応義塾長)が、菅義偉内閣のもとで設立され、岸田内閣になってから、2021年12月22日に報告書を出している。

この会議は、小泉内閣の時に将来、皇位を継承すべき男子が不在であることを前提に設けられ、女系天皇を容認する報告を出したものの、悠仁さまの誕生で前提を失い宙に浮いた「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東京大学総長)と同じ位置づけである。

悠仁さまの誕生と順調な成長を踏まえて検討を行い、報告がなされたので、この報告が今後の国会における検討の出発点になる。そこで、この報告に何が書いてあり、それが具体的に何を意味するかをきちんと解説したい〔引用では「である調」にしたり敬語を省略するなど簡潔にした。また、より詳しい解説は拙著『家系図で分かる日本の上流階級』(ワニブックス)にある〕。

出典=令和3年12月22日、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議「皇位継承問題と皇族数の減少問題について検討した有識者会議の報告書」より

悠仁さまが男子を得られるかが分かれ道に

「有識者からのヒアリングで、皇位継承のルールについて悠仁親王殿下までは変えるべきでないとの意見がほとんど」「皇位の継承という国家の基本に関わる事柄については、制度的な安定性が極めて重要」「次世代の皇位継承者がいる中で仕組みに大きな変更を加えることには、十分慎重であるべき」「現行制度の下で歩まれてきたそれぞれの皇族方のこれまでの人生も重く受け止めるべき」と報告にはある。

そして、「次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないということで一致」「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させる」「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承については、将来において悠仁親王殿下のご年齢やご結婚等を巡る状況を踏まえた上で議論を深めていくべき」と結論づけた。

つまり、悠仁さまが男子を得られるかによって議論の前提が根本的に変わるので、めどがつくまで、20年間くらいは結論を出さないほうが良いということだ。

これは当然で、現在16歳の悠仁さまが、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢(85歳)になられるのはなんと2092年だ。そのとき誰がふさわしいかを、現時点における人気投票的感覚で決めるのは不適切だ。