恋人の家族と行っていた“レジ抜き”

もうひとつは別のスーパーで起こった内引きです。

【事件18:“レジ引き”という手口】(GメンBの場合)

この事件の容疑者は30歳前の男性アルバイト。彼がやっていた手口は“レジ引き”と呼ばれるもので、レジをすり抜けるのではなく、レジを通しはするのですが、その際に何点かチェックを飛ばすことでお金を払わず商品を持ち去るというやり方です。

日南休実『万引きGメンの憂鬱』(ザメディアジョン)

レジ引きはたとえば一度レジを通しておいて、あとから商品を返品したフリをして戻さなかったりと業務に精通した人でないとできない複雑な手口です。

彼が疑われるようになったのは、彼の恋人が家族を連れて買い物に来るようになってからでした。その時のレシートを見ると、どうしてもレジに持ってきた商品点数に比べてレシートに打たれている商品数が少ないのです。店長も何度かレシートの数字がおかしいと指摘したのですが、「これは前の担当者が打った商品が残っていたのだ」などと言い訳を繰り返し、決定的な証拠がつかめずにいました。

彼に関しても店長から直接相談を受け、彼がアルバイトに入る最終日に秘密の包囲網を敷きました。その日も恋人の家族は店に来て、彼はこれまで同様にレジ引きを行いました。その現場を押さえたことで、ここでも彼のアルバイト最終日に内引きを確保することができました。

店長自らが内引きをしているケースも

レジ引きについては、本人はまわりに気付かれずうまくやっているつもりでも、周囲の従業員は案外気付いているものです。特に同じレジを打っている者同士なら、不自然な行動はすぐにわかります。

ただ、その一方でレジ引きはレジを打つべき商品をさっとスルーさせたり、横に置けばいいだけなので、なかなかなくなりません。出来心で簡単にできるし、それがピッと音が出るレジならば、一度レジを通した上で返品処理すればいいだけの話です。

私が話を聞いた中では、店長自らが内引きをしていた店もあるといいます。すぐそこに商品があって、手軽にできるからこそ、ちょっとしたキッカケがあれば誰もが手を染めてしまう……内引きには万引きという犯罪の持つ危うさのようなものが表れているように感じます。

《日南休実の“本音”解説》

内引きは裏切り行為です。自分の職場で給料をもらいながら、会社や同僚をだまして犯罪を行うのですから。日本は仲間意識が強く、和を乱すことを嫌い、指摘しない連帯が大半です。また、古い言いまわしですが、「身内から縄付きを出す」を嫌う恥の文化は、会社の恥、店の恥を長くタブー視してきました。しかしながら、犯罪は必ずバレます。身内の暗部にも向き合うことが必要でしょう。
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