スコットランドにとって独立は必ずしも薔薇色ではない

しかし、現在イギリスはEUを離脱してしまって拒否権はない。スコットランドとしては独立してEUに加盟申請するチャンスである。

とはいえ、スコットランドにとって独立は必ずしも薔薇色ではない。独立すれば相当複雑なインフラ整備が必要となるからだ。

産業革命の中心地だったスコットランドは、第二次産業の縮小とともに貧しい地域に転落した。EUからの補助金を頼りにしたいが、EUは加盟国に財政赤字をGDP比で3%以内に、公的債務残高を60%以内に抑えるという財政規律を課している。

可能性があるのは金融業だろう。世界の金融センターといえばこれまではニューヨークとロンドンだったが、近年はIRでアメリカならボストン、イギリスならエジンバラに行く企業が増えてきた。21世紀型ファイナンシャルセンターとしてのポジションを活かして稼ぐことができればおもしろい。

スコットランドの国家運営がうまくいくかどうかは未知数だが、いずれにしてもスコットランドが独立したら、被征服者の意識が強いウェールズも独立に動くと思う。ウェールズには日本企業の工場が多く、進出企業は動向に注意する必要がある。独立したら、やはりEU入りを目指すだろう。

北アイルランドは、独立したらすぐにアイルランド共和国への編入を望むだろう。北アイルランドはイギリスが国教徒を入植させて支配下に置いた地域だ。しかし、最近の統計ではアイルランド系のカトリック教徒が過半数を超えている。アイルランド共和国と一緒になれば国教徒はおもしろくないが、今や血を見る争いに発展することはないだろう。アイルランド共和国はEU加盟国なので、北アイルランドに関しては申請しなくてもEU入りだ。

スコットランド独立を契機に雪崩を打つように他の2国も離脱して、ユナイテッド・キングダムは“イングランド・アローン”になるだろう。スナク首相にこの未来が予見できていれば、先手を打ってEU再加盟を狙うはずだ。いまのところその兆候はないことが気がかりである。

(構成=村上 敬 写真=EPA=時事)
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