一つとして同じパターンはない

北沢さんは2011年、東日本大震災の直前の2月に、ニュージーランドで起きた大地震に言及した。

「あの時は留学生や旅行者が、大勢犠牲になりました。本当だったら電話で遠隔で采配するのですが、この時はさすがに行かないと無理だろうと、うちから人を現地に派遣して、大使館の方と一緒になって対応しました。ご家族、ご遺族のお世話もあるし、報道陣への対応もあるし、メンタルケアも考えないといけない。本当だったら、そこまでやらないのですが、『究極のところまでやったよね』と、古いスタッフはそのことを、一つの記念碑のように誇りに思っています」

大きいものも小さいものも、過去に対応した記録はちゃんと残されている。今でも北沢さんは過去の記録を見れば、「あの時、本当に大変だった。みんなで泣いたよ」と思い出し、涙がこぼれる。

「同じパターンは一つもありません。その時、その時、社員それぞれみんな、言うに言えないドラマがあって……」

北沢さんたちは日本から出ていく人だけでなく、日本にやってくる外国人にも対応する。

「外国の方が日本に来て、けがなどをした場合、言葉の問題がありますので、治療や入院手続きの世話をしたり、海外の保険に入っている方には支払い手続きのサポートをしたりします」

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最もパワーを使うのは1対1の面談

部下の多くは女性だが、部下で苦労した記憶はあまりない。最もパワーを使うのは、1対1の面談だ。

「部下が顧客とトラブルを起こしたときは、最後は私が引き受けてお詫びに行きますが、その都度、時間をとって事態を省みる面談をします。部下ごとの性分もあるし、お尻を押してあげた方が動く人なのか、勝ち気で鼻を引っ張った方が動く人なのかは見てあげないといけない。仕事に関係ないことでも悩みを抱えているようだったら、ちょっと近くをうろうろしてみるとか、何か言いたそうな時にそばにいる距離感を大事にしています」