仕組債が販売停止に

そのなかで、いま世間を騒がせているのが、「仕組債」だ。

仕組債は、オプション取引というデリバティブ(金融派生商品)を使い、国債や社債より高い利回りが出るよう設計された金融商品である。一方で、あらかじめ定めた水準(ノックイン価格)を下回ると、償還時に元本割れしたり、早期償還されたりしてしまう。

つまり、ハイリスク・ハイリターンの商品だ。もともとは、複雑な仕組みを理解し、リスク許容度も高い機関投資家や事業会社向けの商品だったが、いまでは最低購入金額100万円から個人も購入できる。

仕組債のなかでは、特に、EB債(他社株転換社債)や日経平均リンク債といった商品が売れ筋であり、これら仕組債の利回りは、例えば、期間3カ月で5~7%、商品によっては、10%を超えるものまである。

写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです

しかし、損するケースも少なくない。

ハイリスク・ハイリターンの商品にもかかわらず、証券会社や銀行などによって、投資経験が乏しい高齢者や、金融知識が豊富とはいえない顧客への勧誘や販売もあったとされ、仕組債販売を巡って金融機関への苦情や訴訟などのトラブルも報告されている。

金融庁の調査では、仕組債のひとつであるEB債を購入した個人顧客がわずか3カ月で元本の8割も毀損きそんした例もあったという。このため、金融庁では、2022年8月に発表した「金融行政方針」にて、金融機関の経営陣に仕組債の販売を継続するのか、停止するのかヒアリングすると表明した。

こうした動きを受けて、2022年7月に三井住友銀行が、仕組債の勧誘や販売を停止したのに続き、三菱UFJ銀行、千葉銀行、横浜銀行、広島銀行、大手証券では野村証券、大和証券、みずほ証券、ネット証券の楽天証券やSBI証券などが、販売や勧誘の停止や一部停止に踏み切っている。

また、日本証券業協会は、年内にもガイドラインを改定して「退職金運用」や「証券口座を開設したばかりの人」を仕組債の販売対象外とする方針である。さらに、金融庁の指摘もあり、仕組債だけでなく、ファンドラップと外貨建て一時払い保険についても、金融機関側でその実態を調査する動きもある。