記憶力が低下しても、補助するものを使えれば問題はない

また、顔は思い浮かぶのに名前がすぐに出て来ないのは、想起の能力が低下していることが原因。何かの拍子に「あ、あれは佐藤さんだった」と急に思い出すことがあります。それは、記憶そのものは消えずに脳に保持されているからです。

「保持」はいったん記憶したことを記憶し続ける能力ですが、認知症などの病気の場合を除けば、年を取っても衰えないといわれています。高齢さんは記憶力が低下していますが、生活に不便を感じることは少ないようです。また大事な約束を忘れることもありません。それはどうしてかというと、高齢さんは記憶力の衰えを自覚し、忘れないようにメモしたり、手帳に書いたりして自分で気をつけているためです。

例えば、高齢さんと若年者に「次の会議では、今日配布した資料とハサミを持ってきてください」と伝えたとします。そうすると若年者のほうが、会議に関係なさそうなハサミを忘れることが多いのです。高齢さんは自分の記憶力に頼らず、大切なことはメモを取ったりして記憶を補助するため、忘れにくいのだと考えられます。

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性格は大きく分けると5つの要素で構成されている

年を取ると性格は変わるの? 変わるとすると、どういうふうに変わるの? 年を取ることで変わるものと変わらないもの、寿命や健康に影響する性格を考えていきます。

私たちは普段から人の行動や考え方について、「人格」や「性格」という言葉を使っています。しかし、人の人格や性格は千差万別で、定義しようとすると曖昧になるのも事実。人格や性格が影響を受けるのは、遺伝的なものなのか、それともその人が育った環境や習慣から来るものなのか、または文化的な背景や時代の影響によるものなのかを見極めることは難しいかもしれません。

心理学者や精神科の医師などは、以前から性格を分類する方法について研究してきました。性格にはあるまとまった傾向があることがわかっていて、それはいくつかのグループに分けることができます。現代の心理学では性格を分ける方法として、オレゴン大学の心理学者ルイス・ゴールドバーグが提唱している「ビッグ・ファイブ(5因子モデル)」(図表2)が主流になっています。

これは、性格とは5つの重要な因子によって形成されるという考え方。5因子には、1神経症性・2外向性・3開放性・4協調性・5誠実性があります。その人がどの因子の影響を強く受けているか、弱く受けているかで、性格の傾向が決まるというものです。