葬儀で激怒
同じ2018年12月。特養に入っていた妻の母親が、昏睡状態に陥ったため、妻の妹夫婦と弟夫婦たちと一緒に九州に帰郷。医師からは、「年は越せないかもしれない」と言われていたが、面会時に母親の意識はあり、再び持ち直したため、いったん関東へ戻ることに。
2019年1月11日。妻の母親が逝去。河津さんたちは、葬儀のため再び帰郷。妻と妹、弟の3人が喪主を務めた。
ところが告別式後のことだった。親戚一同が集い、夕食をとろうとしていたとき、アルコールの影響もあったのか、妻の妹の軽口に妻が突然激怒。泣き叫び、口角から泡が出るほどに喚き立て始めたのだ。罵詈雑言の内容は、子供時代の出来事にまで及び、親戚一同から河津さんは、医療機関の受診を勧められた。
それから数日後のこと。関東へ戻り、仕事で昼休み中の河津さんに、妻から電話がかかってきた。朝から健康診断を受診するために出かけたが、健診場所が判らなくなり、迷子になったという。その場所は、全く知らない場所ではなく、年に何度か歩く道の途中だ。妻は、わかりにくい地図のせいにし、指定の時間に行けなかったので、健康診断を諦めたと河津さんに報告する。
すぐに河津さんは、予約を入れた健保組合支部に電話で事情を話し、謝罪した。
ところがその日の夕方、河津さんは、健保組合支部から意外な連絡を受けた。なんと妻は、健診を受けていたのだ。
健保組合の人の話によると、妻は健康診断をすべて受けたあと、オプションの子宮・卵巣検査の代金を、朝、河津さんが封筒に入れて渡していたにもかかわらず、「持ち合わせていない」と言った。そのため、健保組合の人と一緒に近くのATMへ行ったところ、暗証番号を2度間違え、何度も間違えるとロックがかかるので、健保組合の人が止めさせ、振り込み対応にしたとのこと。
このことは、最近の妻の症状が、更年期障害によるものなのか認知症によるものなのかの判別をつけるために、大学病院で検査を受けることを河津さんに決意させるには、十分な出来事だった。
健診から4日後、河津さんと妻は近くの大学病院を受診し、さまざまな検査を受ける。
その約2週間後、妻はアルツハイマー型若年性認知症と診断。その月のうちに河津さんは、妻の自立支援医療を申請した。