「具体的なエピソードを引き出す」問いかけとは

そこで、私は少し工夫を凝らして「これまでの商談で、『意外に効果があった』工夫はなんですか?」と、問いかけてみました。

BEFORE みなさんが普段の商談において、大切にしていることはなんですか?
AFTER これまでの商談で、“意外に効果があった”工夫はなんですか?

照準を「普段大切にしていること」ではなく「これまで効果があった工夫」に変更し、抽象的な一般論ではなく具体的なエピソードが出てくるように、ねらいを定めました。そして「意外に」というほんのちょっとしたスパイスを加えることで、個性的な事例を答えたくなる衝動をくすぐってみたのです。

すると、どうでしょう。場の空気は一転して「そういえば、あのとき……」と、具体的なエピソードが、次々に飛び出したのです。さきほど「ヒアリングです」と覇気のない表情で答えていたあるメンバーは、「ヒアリングで、なかなか肝心の情報が聞き出せないときに、『営業担当者ではなく、友人として聞きたいんですけど……』と枕詞をつけると、教えてもらえることがあるんですよ!」などと、嬉々とした表情で、これまでの個人プレイによって見つけた「こだわり」を、誇らしげに披露してくれました。

互いの個性に耳を傾け合うチームへ

その後も工夫された「問いかけ」を重ねたことによって、これまで心の内に秘めていた気づきやアイデアが場を飛び交い、無事に「初めての話し合いの場」は、大盛況のうちに終わりました。見学していたマネジメント層は「普段そんなことを考えて仕事をしていたのか!」と、一人ひとりが隠し持っていた「こだわり」に驚かされていました。何より、参加した多くのメンバーが「こういうことを話す機会って、これまでなかったですね」「普段からもっと考えていることを共有する時間を作ろうか」と自ら発案してくれ、アイデア交換のミーティングを定期開催することが決まったのです。

写真=iStock.com/AnVr
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工夫された「問いかけ」の力によって、一人ひとりの「こだわり」が発露し、お互いの個性に耳を傾け合う新たな関係性が編み直されたのです。