高額療養費「以外」の費用に注意

高額療養費制度は、いったん先に医療費を支払って、あとから払い戻しを受ける制度ですが、前もって健康保険に「限度額適用認定証」を申請しておけば、自己負担分だけの支払いだけで済ませることもできます。あとから戻ってくるとはいえ、一時的に立て替えるのは大変な場合もあるでしょう。そんなときに役立ちます。

高額療養費制度はとても心強い制度ですが、カバーできない費用もあります。たとえば、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などです。入院中の食事代は、基本的に1食あたり460円となっています。もしも1カ月入院したら4万円ほどになります。

また差額ベッド代は、希望して個室や少人数部屋(4人まで)に入院した場合にかかる費用です。金額は人数や病院によっても異なりますが、中央社会保険医療協議会の「主な選定療養に係る報告状況」(令和元年7月)によると、1日あたりの平均は6354円となっています。もっとも、個室のみの平均が8018円と突出して高く、2人部屋だと3044円、4人部屋は2562円などとなっています。

そして先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な技術を伴う医療のことです。先進医療の治療費は健康保険の対象外なので、全額自己負担です。

家族の「世帯分離」で介護保険サービスの自己負担額を減らす

「世帯分離」とは、同居している家族が住民票の世帯を分けることです。世帯分離をすることで、介護費用を削減できる場合があります。もちろん世帯分離をしたあとも、そのまま同居していて構いません。

頼藤太希『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)

高額介護サービス費の自己負担の上限額は、本人の所得で決まる場合と世帯の所得で決まる場合の2つのパターンがあります。たとえば、介護サービスを受ける親を世帯分離して、親単独の世帯にすれば、世帯としての所得が大きく減るため、高額介護サービス費の自己負担を大きく減らせる、というわけです。

介護サービスを受けている親(住民税非課税)が、住民税の課税される世帯と同世帯にしていた場合、高額介護サービス費の負担限度額は月額4万4400円になります。しかし、世帯分離をして親だけの世帯になった場合、高額介護サービス費の負担の上限額は「世帯全員が住民税非課税」にあてはまるので、月額2万4600円となります。

さらに、仮にこの親の前年の年金年収とその他の所得金額合計が80万円以下だったとしたら、負担の上限額は月額1万5000円になります。同じ介護サービスを受けていても、負担が月約2万~3万円、年間で約24万~35万円ほど減らせることになります。

2021年8月からは、高額介護サービス費の負担限度額が見直され、高所得者の負担限度額がアップ。もっとも負担の重い世帯で月額14万100円の負担になっています。高所得者の方こそ、世帯分離を検討してみてもいいでしょう。