※本稿は、頼藤太希『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)の一部を加筆再編集したものです。
遺産の分配には細かい決まりがある
退職金と並んで、大きな金額が入ってくる可能性があるのが、親の財産(遺産)です。親が亡くなると、故人の財産は遺された家族が相続します。このとき、相続する人(法定相続人)や金額の配分(法定相続分)には細かい決まりがあります。
配偶者は必ず法定相続人になって財産の2分の1から4分の3を相続するのが基本です。残りの財産は、優先順位の高い人で分け合います。
出所=『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』
たとえば、両親のうち父親が亡くなった場合、母親が財産の2分の1を相続し、子どもである自分(とその兄弟姉妹)が残りの2分の1を(人数で分けて)相続します。なお、その後母親が亡くなった場合には、母親の財産すべてを自分(とその兄弟姉妹)で相続します。
たとえ親子間の相続であっても、相続時には相続税がかかります。ただし、相続税は「3000万円+(600万円×法定相続人の人数)」までの金額であれば非課税です。また配偶者は「配偶者の税額軽減」によって、1億6000万円まで非課税になります。相続税は、相続する財産がこの金額を超えた場合にかかるので、相続税がかからない方も多くいます。
もっとも、法定相続分はひとつの目安です。故人の遺言書で財産の分け方が指定されていればそちらが優先されますし、遺言書がない場合には法定相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、財産をどのように分割するかを決めます。
泥沼化しやすいのは財産が「不動産」のとき
しかし、この遺産分割協議が揉めやすいのです。たとえば、財産が自宅や土地といった不動産の場合。不動産と同額か、それ以上のお金や金融資産があればまだいいのですが、主な財産が不動産だけとなると分けにくいでしょう。
また、複数の兄弟姉妹のうち1人だけが親の介護をしていたという具合に、生前の親に対する貢献度の違いを巡ってもトラブルになりがちです。兄弟姉妹で同額ずつ受け取るというのでは、介護していた人は不公平だと感じるかもしれません。
さらに、そもそも法定相続人同士の仲が悪いというケースも。お互いに意地を張って、自分の主張を通そうとすれば、まとまるはずの話もまとまりません。