80年代まではパソコン導入に積極的だったが…

意思決定が遅い、誰が責任者かはっきりせず、いろいろな人が文句を付けるので業務が進まない、形だけの管理職が多く、マウンティングに終始して担当者の業務を邪魔する、といった問題は、最終的には組織文化やリーダーシップに関係してきます。

しかしながら、IT化を進めなかったことが、一連の問題を深刻化させたことは間違いありません。企業がこうした風潮でしたから、社会全体のIT化への対応も同じような結果になってしまいました。

日本は諸外国と比較して、インターネットの普及が遅かったわけではありません。米国でインターネットが商用化されるとすぐに日本でも同じサービスがスタートしており、当初は両国にそれほど大きな差は生じていませんでした。

ところが米国では1990年代前半から一気にネットが社会に普及したのに対して、日本では90年代後半にならないと本格的な利用は始まりませんでした。先ほど企業のパソコン保有台数のデータを紹介しましたが、日本社会は1980年代までは米国と同様、パソコン導入に積極的でしたが、その後は、むしろ普及が低調になっているのです。

そうなってしまった理由のひとつは諸外国との価格差です。

日本は今でもそうなのですが、国内メーカーは独自の技術仕様にこだわり、日本でしか通用しない独自製品を高い価格で売ろうとする傾向が顕著です。日本メーカーは特殊仕様のパソコンにこだわっていたため、同じスペックのパソコンを買うと、日本では米国の2倍以上の価格になるという時代が長く続きました。

1990年代前半に、米国メーカーが割安な機種を日本市場に投入したことで価格破壊が発生し(いわゆるコンパックショック)、日本でもようやくパソコン価格が下がりましたが、一方で日本メーカーは総崩れになってしまったのです。

通信サービスも規制緩和が進まず、料金が高止まりしてしまった

ネット接続サービスにも同じことが言えます。

日本はネット接続サービスのスタート時期こそ、米国には遅れませんでしたが、通信サービスの規制緩和が進まず、料金が高止まりするという問題が発生していました。特に企業のIT化に大きな影響を及ぼす専用線の内外価格差は大きく、先ほどの平成11年版通信白書によると1.5Mbps(メガ・ビーピーエス)のデジタル専用線のサービス価格は米国の3倍でした。

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ITというのは、生活の隅々にまで影響を与える技術ですから、ITを社会全体の成長につなげていくには人材投資も並行して行う必要があります。しかし、日本企業はこの点においても著しく遅れています。企業における人的投資のGDP比を国際比較すると、日本は壊滅的な状況と言えます。