だが、アークスグループは、このやり方に全面的に従っているわけではない。業績のいい企業同士が合併して、それぞれのよさを残していこうとする。横山社長の言葉で言うと、「八ケ岳連峰経営」だ。それぞれの山がそれぞれに機関車となって進む経営である。他方、全店標準化経営に従えば、富士山のように一つの山が聳え立つ「一機関車型経営」になる。つまり、アークスグループでは、規模の経済や標準化の追求は最優先ではない。
こうした理念の下、異なるタイプの店が展開されている。それは、地域のニーズや地域の競争状況に従い、それぞれの店舗のポジショニングを考えるものである。コストパフォーマンスだけ狙った標準化の限界を認識し、できる限り多様化していこうという方策である。そのバランス感覚が、同社の経営の中心にある。
ヤオコーは「ミール・ソリューション」に注力
ヤオコーの10年度の売上高は2210億円。経常利益は94億円。売上高経常利益率(4.3%)は、この業界では平均すると2.5%前後なのでかなり高い。それを可能にする独特の経営がある。
まず、小売店の飛び道具といわれる、「安売り」と「ポイント」は使わない。飛び道具を封じられた各店は、それ以外で店の魅力づくりを図る。それが、店それぞれをエリアに合わせたミール・ソリューションの展開だ。具体的に、同社は、惣菜類(寿司・ベーカリーを含む)と生鮮を合わせて、全店売上高の半分を占めることを目標として掲げる。そのために、とりわけ惣菜類の売り上げ拡大に力を注ぐ。それは、スーパーマーケットの新しい手本となるものだといわれる。
スーパーが誕生した当初、「安かろう、悪かろう」と言われた。だが、その後、各社の懸命の努力で、生鮮3品の品質価格において小売市場のレベルに追いついた。それが1980年前後。しかしその後、経済の成熟化が進むにつれ、生活者の美味しさへの期待は増し、それに応じて食品加工度の要望も上がっていった。魚一匹を買って自分で料理するより、盛り合わせの刺し身や煮つけを買う。野菜サラダも、盛り合わせサラダを店でそのまま買って帰るというやり方が好まれる。鮮度・品質のよい生鮮素材を多種多様に取り揃えるだけでは、現代の生活者の要望には応えられない。
ヤオコーは、そうした状況を読み、三味という惣菜メーカーを子会社として持ち、惣菜類事業の展開に努力を重ねる。お店で「『おはぎ』がわが店の売り物」と勧められ、おはぎを買って店内のお茶が準備された休憩所で食べた。「いくつも食べることができるよう甘さを抑えています」とのことだったが、確かにしっかり2つは食べられそう(笑)。