血流の悪さ、強度近視、遠視も原因に…
ところがさらに、緑内障が「眼圧」だけが理由で起きているのではないことも分かってきました。
特に、私がドイツで学んでいた時には、視神経の周りの血流について多くの議論をしたものです。明らかになったのは、「血流が悪い」ということによっても、緑内障につながる視神経障害をきたすということです。
さらに、長い眼軸による強度近視や、逆に短い眼軸による遠視眼(図表1)でも、緑内障が起こることもよく分かってきました。
多くの電子顕微鏡での細胞レベルの論文により、強度近視では「視神経の機械的圧迫」が篩状板(図表2)(目の中と外の境にある視神経が通る組織の周りの硬い組織)で起こることで視神経障害が起き、緑内障となることも分かってきています。
この篩状板による圧迫は、血流障害もきたします。つまり、視神経への「機械的圧迫」と、栄養や酸素を供給するための「血流の低下」が同時に起きていることが推測されます。
近視が緑内障を引き起こすメカニズムとは…
強度近視で多いこの篩状板での圧迫は、眼球が近視化時に伸びることによる篩状板の構造変化が原因でしょう。
多くの方は、近視の本体を誤解されています。近視が進むとは、目の長さが長くなることで起きます。この目の長さが伸びる過程で、眼球の壁を通る視神経が、ちょうど狭くなっている篩状板という眼球強膜とつながっている硬いリング状の部分を歪ませ変形させます。これにより、視神経乳頭部分の組織血流が悪くなる(図表3)のです。
また、視神経周りの軸索絞扼障害や、軸索流の低下も起きて、そのもとである網膜視神経節細胞が死に、視力低下や視野欠損が起きます。ですから、強度近視は緑内障を起こしやすいのです。
20歳を過ぎれば、通常、近視への変化は止まります。しかし、20歳を過ぎても近視がどんどん進むとしたならば、それは「強度近視」という病気なのです。