首都圏の地下にある3つのプレート

さて、首都圏の地下はもう少し複雑で、もう1枚別のプレートが加わっている。「フィリピン海プレート」と呼ばれる海のプレートが、太平洋プレートと北米プレートの間に割り込んでいる。すなわち、首都圏の地下では3枚のプレートが互いにひしめいているのである(図表2)。

図表=筆者作成

これは首都直下地震の成り立ちを考える上で重要なので整理してみよう。首都圏は北米プレートという陸のプレートの上にあるが、その下にフィリピン海プレートという海のプレートがもぐり込み、さらにその下には太平洋プレートという別の海のプレートがもぐり込んでいるのだ。

そして、プレートの境界が一気にずれたり、また地下の岩盤が大きく割れたりすることで、さまざまなタイプの地震が発生する(鎌田浩毅著『日本の地下で何が起きているのか』〈岩波科学ライブラリー〉を参照)。

国の中央防災会議は、首都直下で発生する地震を具体的に予想し、4つのタイプに分けた。最初のタイプは「都心南部直下地震」や「東京湾北部地震」と呼ばれるもので、M7.3の直下型地震が起きる。

簡単に言うと都心の地下で起きる大地震であり、東京23区を中心に激しい揺れをもたらす。その結果、23区の半数以上で震度6強の揺れに見舞われると想定された。

今回想定されている首都直下地震は、江戸時代にも起きたことがある。幕末の1855年に東京湾北部で安政江戸地震(M7.0)が発生し、4000人を超える犠牲者を出した(図表3)。こうした「過去に起きた負の実績」から、将来必ず起きるとされる首都直下地震の被害想定の数字が出されたのである。

図表=筆者作成

東京都の被害想定が見落としていること

さて、先に述べたように東京都は首都直下地震に関する新しい被害想定で、約3割少なく下方修正した数字を出した。具体的には、前回の発表以降の10年の間に建物の耐震補強が進んだため、直下型地震によって全壊する戸数が減ったことを理由に挙げている。

たとえば、延焼の恐れがある木造住宅密集地域の解消などが進んだことが要因」とした。特に、地震の直後から起きる火事によって延焼の恐れがある木造住宅密集地域の解消が進んだことも、試算の根拠としている。確かに住宅の耐震による倒壊家屋数の減少は犠牲者数の減少に直結するので、正しい判断であると思う。

一方、10年間の家屋の老朽化や都市インフラ全体の劣化がこの試算には十分考慮されていないという問題点がある。