町民の半分以上が移住者

先に、1994年から2020年までの27年間で、7063人→8437人(※令和2年12月31日現在 東川町HPより)と19.4%の増加となったと述べたが、いったい、どんな人たちが移住してきたのか。

「2年前に調べたところ、東川町に住み始めて20年以内の人を移住者として考えると、全人口の54%が移住者という結果が出ました。写真甲子園に参加した人がこの町を好きになってくれ、地域おこし協力隊や職員として東川町に戻ってきてくれる動きもあります」(吉原課長)

移住者は隣接する旭川からが3割程度。次いで札幌などの道内からが3割程度で残りは東京や大阪などといった道外の都市からという。

テレワーク可能なWeb関係、デザイン関係などの自営業、パン屋、カフェなどの経営者もいれば、東川町内で仕事を探して再就職する人もいるなど職業はさまざま。年代、家族構成としてはここ数年、30~40代の子育て世代が全体の7割を占めているそうだ。

旭川市の中心部から13キロ、車で20分強と近いことから旭川市内に勤める人が多いのでは、と思うかもしれないが、2015年の国勢調査で見ると東川町は昼間人口のほうが多い。

つまり外に働きに出ている人よりも、東川町に働きに来ている人のほうが多いのだ。

町内には大企業はないものの、飲食店や各種の工房などたくさんの勤め先があるためだろう。ちなみに町内には約60店の飲食店があり、ここ十数年で2.5倍ほど増えている。

移住に対してではなく、定住に助成金を出す

町は移住者が町のコンセプトに共感してくれることが大事だと考えている。

「東川町の場合は移住したことに対して助成をするのではなく、東川住宅設計指針に沿った住宅を建てることや、地下水で暮らす町らしく、水や景観にこだわったカフェやモノづくりショップ等の起業に対して助成しています。

町の進むべき方向に合致することに対しての助成を行っているわけです。移住したからプレゼントというだけでは、定着率も悪いでしょうし、逆に東川町の魅力を下げてしまう結果になりかねません」(吉原課長)

移住支援制度そのもので人を呼ぶのではなく、ここに長く住みたいと思ってもらえる町を作ることで、他の自治体と差別化しているのである。

興味深いのは、移住者に対する住民の反応だ。 

2007年から写真甲子園の参加者は滞在初日に東川町の家庭にホームステイすることになっている。さらに大会期間中は、運営に町内外のボランティア、高校生、子どもたちなど幅広い年代の人たちがさまざまな形が関わる。

それによってオープンマインドな、「よそ者」を受け入れる文化が根付いたと吉原課長は話す。

写真提供=東川町
「写真甲子園」の様子