本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」

――「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。

米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。

風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のようなほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。

この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。

本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という。

ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」

――「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。

論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。

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中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。

中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ。