補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで…
補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。
米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。
中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。
――中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。
日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう。
兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も
――「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。
中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。
国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。
・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化)
・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI)
・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス)
・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学)
・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力)
・南京航空航天大(航空・宇宙工学)
・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)