それらすべてについて、毎回のテーマから品数、料金、想定客単価に至るまでメニューの大枠を固めるのが、ワタミフードサービスの業態企画本部・商品企画部だ。企画の源泉は「お客様の声やマーケティングデータ、経営トップの声」(部長の黒須乾氏)。
グランドメニューは店舗投入の半年前、季節メニューは3カ月前から商品化の検討を開始する。実際のメニューづくりでは、同じ業態企画本部の商品開発部メンバーが加わり、わいわいがやがやと作業を進めていく。
商品開発部は、正真正銘のプロ集団だ。6人いるスタッフのうち、たとえば課長の柴崎欣也氏はフレンチの料理人からスタートし、7軒のレストランやホテルで修業を積んだ練達のシェフ。彼らが企画に沿って商品の具体化作業を進めていく。仕事の中身は、情報収集とアレンジ、調理、そして修正の繰り返しだ。柴崎氏がいう。
「たとえば鶏の唐揚げをつくるとしますね。まずはネットや雑誌で評判店をリサーチしますが、もっと大事なのは口コミで店を知ることです。とくに小さなお店は近隣の人を相手にしますから、ネットの情報には引っかかってこないことが多いんです。個人営業の店や小さなチェーンで、おいしい唐揚げを出しているお店がある、と聞いたら全国どこへでも飛んで行って試食をしてきますよ」
こうして収集したさまざまな味を、柴崎氏ら商品開発部スタッフが社内の厨房で再現、あるいはアレンジして試食となる。OKを出すのは桑原豊社長である。
通常は2~3回の試食でゴーサインが出るが、ときには20回以上も修正を繰り返す場合がある。たとえば2009年春のグランドメニューで大幅刷新した餃子(鉄鍋餃子)である。和民の鉄鍋餃子は、折からの餃子ブームに乗り大ヒット商品に育った。
流行を先取りして準備を重ねておき、いよいよ需要が盛り上がったところへ完成度の高いキラー商品を投入する――。大手チェーンらしく、正攻法で勝負しているのが和民なのだ。