繰り上げ返済を年明けまで待つと、年末の住宅ローン残高は減らなくて済む。だが一方で、返済が1カ月遅れる分だけ利息軽減効果は減ることになる。

利息軽減効果が1カ月でどれだけ減るかは金利水準や繰り上げ返済時期によって異なり、その計算は非常に複雑。前述の借入額3000万円、金利2.5%、期間35年の固定金利ローンを借りて1月に返済をスタートした例で計算すると、返済開始から2年後の12月に100万円の繰り上げ返済を行った場合と年明けの1月に行った場合の利息軽減効果の差額は約4500円になる。つまり、繰り上げ返済を1カ月遅らせたことで、住宅ローン控除額はプラス1万円、利息軽減効果はマイナス4500円となり、差し引き5500円のトクになる計算だ。このように、1%の住宅ローン控除を受けている間の繰り上げ返済は、一般的に年末より年初のほうがトクといっていい。

もっとも、忙しいサラリーマンの場合、「後にしよう」と思っているとズルズル先延ばしになる可能性もある。思い立ったときに実行したほうが結局トクになることもあるので、あまり考えすぎないほうがいいかもしれない。

なお、「繰り上げ返済するよりも、その額を運用して増やしたほうが有利ではないか」と考える人もいるだろう。だが、ノーリスクで住宅ローン金利より高い金利の得られる固定金利商品は存在しない。また、リスクを伴う投資の利益は不確実で、確実に支払利息を減らせる繰り上げ返済と比較はできない。将来への不安を少しでも減らしたいなら、まずは借金をできるだけ減らすことを優先するべきだろう。

一方、繰り上げ返済に熱心になるあまり、貯金を全部ローン返済に回してしまう人もいるが、それでは予想外のことが起きても対応できない。イザというときのお金200万円程度のほか、今まで貯めた教育費の分は、貯金として確保しておくことが重要だ。そして、年間に貯められる額の半分を貯金し半分を繰り上げ返済用の資金に充てる。そうしないと、貯金額はいつまでも増えないままになってしまうからだ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=有山典子 撮影=坂本道浩)
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