環境影響評価書の出るタイミングが鍵
環境問題から辺野古の新基地建設を止める動きもある。近海に生息するジュゴンの保護を求めて、日米の環境保護団体と沖縄在住の個人数名が、米国防総省と同長官を相手にサンフランシスコ連邦地裁に提訴した「ジュゴン訴訟」だ。
環境アセスの専門家として知られる沖縄大学の桜井国俊図書館長はこういう。
「かつては50頭ほどのジュゴンがいたといわれた辺野古で、今は3頭しか見つかっていません。辺野古の海に基地を建設すれば、その3頭は確実に死にます。子孫がどうなるか。個体群存続可能性というのですが、これが問題なんです」
08年1月の中間判決では、原告が勝訴した。本判決が出れば、着工がたとえ日本政府だとしても米政府の許可が必要になる。米国文化財保護法では、他国の法律に守られた文化財も保護するよう規定されている。
司法裁定で米政府が保護のための手続きをとらなければ工事には入れない。米政府は、基地建設がジュゴンの生育に悪影響を及ぼさないことを証明できない限り、基地を造れないということだ。
個人で原告に名を連ねている在沖建築家の真喜志好一氏と環境ネットワークのメンバーは、今後は米国世論に直接訴えかけていこうと考えている。
「鳩山前首相には正確な情報が伝えられていなかったのでしょう。同様に、沖縄の人々の立場や意見も米政府や米世論に伝わっていません。私は、今回の日米共同声明の揺り戻しは可能だと考えています。なぜなら、これまでも合意内容は変化してきたのですから、今後も変わりうるものだと思うからです」
普天間基地の無条件返還と辺野古新基地建設への反対民意。地元沖縄の強靭な意志を菅政権はどう受け止めるか。沖縄の今後の展開次第では、日米合意を動かす大きな変化が表れるかもしれない。
※すべて雑誌掲載当時