生産者物価指数の上昇はユーロ圏、中国でも

同じことは、わが国以外にも当てはまる。また、中国では新型コロナウイルスの感染再拡大が深刻だ。共産党政権は“ゼロコロナ対策”を徹底せざるを得ず、港湾の稼働率は低下し、世界経済の供給制約は強まっていると考えられる。複合的な要因が重なることによって、わが国の企業は急速なコストの増加に直面している。

わが国以外の国や地域でも生産者物価指数は上昇している。2月のユーロ圏の生産者物価指数は前年同月比で31.4%上昇とかなり高い。3月の中国の生産者物価指数は同8.3%、米国では同11.2%の上昇だ。世界全体で原材料価格の上昇や人手不足などを背景に、各国の企業がコストプッシュ型のインフレ圧力の高まりに直面している。

個人消費が伸び悩み、内需が停滞している

物価の水準や変化率を示す、もう一つの経済指標は消費者物価指数だ。これは、私たち消費者が買い物をする場合の価格水準だ。各国の消費者物価指数の推移を見ると、個人消費など経済環境の強弱によって上昇率の高低が分かれている。

米国では、消費者物価指数の上昇が顕著だ。米国の労働市場は緩やかに改善し、個人の消費は堅調さを維持している。経済環境としては、企業が増加したコストを販売価格に転嫁しやすい。そのため、3月の消費者物価指数は総合ベースで8.5%、エネルギーと食品を除くコア指数は6.5%上昇した。企業物価指数との上昇率の差は相対的に小さい。

しかし、わが国や中国、ユーロ圏などでは、複合的な要因によって国内の個人消費が弱い。そのため、企業がコストを価格に転嫁することが難しい。一例として、2月のわが国の消費者物価の総合指数は前年同月比0.9%、生鮮食品を除く総合指数は同0.6%上昇した。内需は停滞している。4月以降は携帯電話料金引き下げによる物価下落の効果が剝落し、わが国の消費者物価指数の上昇率は2%程度に達するだろう。それでも、企業物価の上昇ペースに比べると消費者物価の上昇ペースは鈍い。