「円安と資源価格上昇」で景気減速は避けられない
ウクライナ危機をきっかけに、天然ガスや原油などのエネルギー資源や小麦や大豆など穀物の商品価格が上昇している。それに伴い、世界的に川上の物価水準である企業物価指数(卸売物価指数、生産者物価指数とも呼ばれる)の上昇が鮮明だ。その一方、川下の消費者物価指数の上昇率は落ち着いている諸国もある。
足許の世界経済の中で、唯一景気が堅調な米国では、需要が旺盛であり企業が原材料や中間財の価格上昇を最終価格に転嫁できる。しかし、わが国では消費動向が弱く、価格転化が難しい。その分、企業がコストアップ分を負担する格好になっている。
今後の物価の展開は、いつまで、ウクライナ危機や新型コロナウイルスの感染再拡大が続くかに大きく影響される。コロナ禍とウクライナ危機で世界のサプライチェーン寸断も深刻だ。その修復にはかなりの時間とコストがかかるだろう。それに加えて、5月あるいは6月から、米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利上げとバランスシートの圧縮を同時に進める方針とみられる。
金利上昇が個人消費を圧迫し、足許の世界経済を支える米国が景気後退に陥る展開は否定できない。円安と資源価格の上昇などによってわが国の企業業績は圧迫され、経済成長率がこれまで以上に停滞する恐れが増している。
安いロシア製が輸入できない木材分野に大打撃
物価の推移を表す経済指標には大きく2つある。一つ目は企業物価指数だ。これは、企業間で取引されるモノの価格水準を表す。足許の世界経済全体で、企業物価の上昇は鮮明だ。4月12日に日本銀行が発表した3月の企業物価指数(速報)は前年同月比で9.5%上昇した。
品目別に前年同月比ベースで価格の上昇率を見ると、木材・木製品が58.9%、鉄鋼が27.9%、石油・石炭製品が27.5%、非鉄金属が23.5%、化学製品が13.2%などとなっている。企業物価を輸出と輸入に分けてみると、石油・石炭・天然ガスの価格が円ベースで84.4%上昇したことなどによって、輸入物価の上昇率が輸出物価を上回っている。
2月の実績は速報の同9.3%から9.7%に上方修正された。わが国の企業物価の上昇が鮮明となったきっかけの一つは、ウクライナ危機の発生だ。それによって世界経済がグローバル化からブロック化に向かい始めた。米欧などの自由主義の国vsロシアという分断の構図が鮮明化したことによって、世界経済へのエネルギー資源や穀物、木材などの供給が減少して価格が上昇した。
わが国では、コロナ禍以降の木材価格の上昇に加えてロシアからの木材輸入が止まり、国内の木材を用いて合板を生産しなければならない企業が出始めた。ロシアからの安いモノを輸入することができなくなり、高いモノを買わなければならない企業が増えている。