「強いAI」を人間の脳に取り込むとどうなるか

しかし、その矢先に、中国政府がデジタル人民元を誕生させ、アリペイやウィーチャットペイの決済に利用する可能性が高まりました。表面的にはスマートフォンのアプリにすぎないものの、GAFAMが関係する電子マネーとクレジットカード決済では、中国政府のデジタル人民元には歯が立ちません。すでに勝負の行方は決まっているのです。

だからこそ、GAFAMでは2010年代の情報収集戦から新たな活路を見出そうとしています。実は、その新たな活路こそが、2029年に誕生する「強いAI」に関係するビジネスなのです。その本質とは、単なる広告ビジネスではありません。金融情報の掌握どころの話ではありません。

人間の脳とクラウドコンピューターを直接接続し、人間の脳力をパワーアップさせたあげく、2029年からは「強いAI」を人間の脳に取り込んでしまおうというものです。

人類が進化した生物となるインフラを提供するビジネスなのです。

ポストヒューマンの誕生です。

仮に、デジタル人民元により、すべての人類の消費行動や資産状況が掌握されたとしても、人間の脳がクラウドコンピューターと直接接続されて、2029年からはクラウドコンピューター経由で「強いAI」と直接結びつく時代が始まれば、「たかが金融データごとき、中国政府にくれてやったところで、われわれの脳が抱えるデータの一握りにすぎない」と一笑することができるはずです。

方波見寧『2030年すべてが加速する未来に備える投資法』(プレジデント社)

人間の脳とクラウドコンピューターとの接続、「強いAI」の誕生、超人となった人間の活動の場を提供するために、フェイスブック、グーグル、そして、イーロン・マスクはすでにビジネスを開始しています。

フェイスブックとニューラリンクでは、人間の脳とコンピューターを直接接続するためにブレイン・マシーン・インターフェースを開始しており、人間が思ったことが1分間に300語のスピードでコンピューターに記録されます。グーグルではカーツワイル博士が莫大な研究費を手にし、大脳新皮質を模倣した「強いAI」の実装に向けて邁進しています。そして、フェイスブックではゴーグルだけでメタバースという仮想空間を提供しています。

すでにGAFAMらは、2029年の「強いAI」の誕生に向けてスタートしています!

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