ビッグデータを学習した強いAIに人類の勝ち目はない

「強いAI」を誕生させた時点で、GAFAMやBAT(≒中国政府)は、人間の脳力を上回る「非生物的知能」を手にすることになります。「強いAI」という非生物的知能は、自らの知能をいとも簡単にほかのAIに複写して、自らと同じ「強いAI」を量産でき、多数の「強いAI」によって自らの能力を超える「強いAI」を誕生させることができます。

「強いAI」を量産することができれば、人間の脳力をはるかに超えた「非生物的知能」がテクノロジーの開発を始めるため、エクスポネンシャル・テクノロジー12産業は、その一つ一つがY=2xのような指数関数的な潜在的成長力を持っている上に、カーツワイル博士によれば2029年に誕生する「強いAI」が司令塔となることによって相互作用を開始して、2030年から爆発的な加速を始めます。

これこそが「2030年すべてが加速する未来」の正体なのです!

それだけでなく、「強いAI」を誕生させ、なおかつビッグデータを入手した時点で、世界の経済活動を手中に収めることが可能です。SNSなどでは、住所、氏名、生年月日、学歴、勤務先どころか、何が趣味で、何にお金を使い、誰と交友しているかなどの嗜好まで記載されています。

こうしたビッグデータを「強いAI」が学習した場合、どのような製品を作って、どのようにマーケティングをして、どのようにディスプレイすれば、どれだけの販売が見込めるかが、すべて正確に予測されていきます。もはや人間が勝負できる次元ではありません。

AIの概念
写真=iStock.com/metamorworks
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グーグルやAppleが電子決済に舵を切った理由

2010年代、GAFAMは破竹の快進撃の中にありました。特にグーグルでは、検索、マップ、Gメールなどを無料提供するのと引き換えに、クッキーを仕掛けておいて、そこから閲覧者を追跡することで個人情報を集め、「弱いAI」を利用してビッグデータを分析させて、人物像を推定させ(=プロファイリング)、ターゲット広告を打つという検索連動型広告で大成功を収めました。

ところが、これらに対して欧米では、個人情報保護や独占禁止法などの観点から反対運動が起こり、2020年にアメリカでは反トラスト法訴訟でグーグル、フェイスブックが提訴され、アマゾン、アップルにまで影響が及びました。イギリスやEUでは違法コンテンツや利用者ごとに異なる広告には表示基準の開示を求め、重大な違反に対しては世界年間売上の10%の罰金が課される可能性があります。

この結果、2020年にアップルのブラウザではサードパーティークッキーの排除を実行し、グーグルのブラウザでもサードパーティークッキーを行うことをやめ、利用者のサイト閲覧の追跡もやめることとなりました。そこで検索データ等でクッキーやサードパーティークッキーを利用しない代わりに、金融情報を入手するためにスマホ決済の電子マネーやクレジットカードビジネスに関係するようになったのです。Google PlexやApple Cardなどが典型です。