コミュニケーション能力はあるのに人づき合いを避けてしまう人

もう一つ、グレーゾーンと判定されるケースで多いのは、コミュニケーション能力自体は問題がないのに何となく人づき合いを避けたり、自分からは会話をしないというケースだ。また、コミュニケーションはとっていても、心から親しみを感じたり、気を許したりということがなく、表面的な関係から進展しないというケースもある。

自閉スペクトラム症の社会的コミュニケーションの障害の一つに、「相互の対人的情緒的関係の欠落」という項目がある。これは言い換えると、人と親しくなり、心を通い合わせることの障害だと言える。この障害が一番わかりやすいかたちで表れるのが、友だちができにくかったり、友だちがいないということだ。

しかし、この要件は、自閉スペクトラム症の二つの要件(こだわり症と社会的コミュニケーション障害)のうちの一つに含まれる、三つある症状の一つに過ぎない。この症状が認められたからといって、自閉スペクトラム症と診断されるわけではないのだ。ほかの要件が満たされなければ、該当せずということになる。

心を許した友だちなどいなくても、そつなく言葉を交わし、社会人として問題なく振る舞える人もたくさんいる。彼らは、ASDどころか、社会的コミュニケーション障害さえない。しかし、他者と親しくなり、気もちを共有するという能力が欠落しているか、低下している。コミュニケーション能力自体は備わっているのに、人と親しまないのはどうしてだろうか。

人と親しめない「非社会性タイプ」と「回避性タイプ」

親しい交わりを避けるという場合には、大きく二つの場合が考えられる。一つは、非社会性という傾向をもつ場合で、もう一つは回避性という傾向をもつ場合だ。

非社会性のタイプには、対人交流よりも孤独を好むという傾向があり、それは人と交わることに喜びを感じにくいためだと考えられる。その代表が、シゾイドパーソナリティ(障害)で、根っから孤独好きなタイプだ。

それと、似ていて少し異なるのが、回避型愛着スタイルである。シゾイドパーソナリティ障害はASDがベースにあると考えられ、生得的要素が強いのに対して、回避型愛着スタイルは、ネグレクトや、温かい情愛の欠けた、または、過度に干渉的な養育環境で育ったことが要因として大きいとされる。

つまり、ASDのグレーゾーンというよりも、原因が異なる別のものである。回避型愛着スタイルは人の愛情や関わりを求めないことで、バランスをとっている。他人を必要とせず、自分だけで満足できるので、孤独でも安定している。逆に言えば、このタイプと心が通った関係をもとうとしても、本人は求めていないので、すれ違いになりやすい。

写真=iStock.com/stock-eye
※写真はイメージです