低迷する王室への信頼
大手調査会社「Ipsos」によると、コロナ禍が始まったばかりの2020年4月の調査では、国王を「信頼している」と答えた国民は76%にも上っていた。しかし、同年秋のコロナ禍のバカンスなどが影響し、12月には47%に低下。2021年9月時点でも40%台と低迷が続いている。
王室ジャーナリストのジョセフィーヌ・トレアイさんは、こうした調査結果について「信頼の回復には時間がかかる。また、コロナ禍による活動自粛のため、以前に比べて国王夫妻の姿を見る機会が大幅に減ったことも影響したのではないか」とコメントしている。
王族が国民と触れ合う機会となっていた「国王の日」は、2020年はコロナ禍のためハウステンボス宮殿からオンラインとテレビで中継。また2021年は、国王一家がオランダ南部のアイントホーフェン市を訪問したが、こちらも例年のような一般市民との交流はなく、オンラインとテレビでの中継となった。
Ipsosの調査でも「コロナ禍で国王の姿を見る機会が減った」と感じている人が、2020年4月の20%から2021年4月には36%と、16ポイントも上昇。さらに「コロナ禍で国王に支えられていると感じた」人も40%から23%に減少した。
オランダでコロナ規制の大部分が解除されたのは今年2月下旬のこと。国民の信頼回復に向けた模索は続く。
悩める18歳、王女がついた小さなため息
こうした状況の中、アマリア王女の自伝出版は、国民に直接生き生きとした王族の姿を伝える、貴重な機会となった。
本の中で彼女は、不安や葛藤も明らかにしている。
将来の女王の地位について、自分の中で折り合いをつけたのは14歳のときだったという。王女はデブライさんに「王室は政治、宗教、出身などに関わらず、すべてのオランダ人を代表する」という考えを「美しい」と感じていると語り、「私は喜んでそれを引き受けます」と述べている。
しかし、デブライさんは彼女の葛藤を見逃さない。王女は、「そうでなくてはならない」と言って、小さくため息をついたという。
そして、もし今、国王の身に万が一のことが起こったらという質問にはこう答えている。「最初の数年間は、母に代わりを頼むでしょう。でも、父には言いました。『健康的に食べて、たくさん運動して』(長生きして)って」
王女は、心理セラピストのカウンセリングも受けているという。これは友達のように慕っていた叔母(マキシマ王妃の妹)が自死したことも影響しており、専門家に相談することは大切だと明言している。「タブーにする必要はありません。心の問題について公に話すのは、問題ではないと思います」