ちなみにこの「イクメンプロジェクト」サイト内を探しても、わが子をどう育てるべきか、どう育てていったらいいか、ということには一切触れていない。

するとイクメンプロジェクトのメッセージは、「夫婦で協力してより多くの子どもをもってね、その後のこと(どんな子に育っていくかなど)は知らないよ」になってはいないだろうか。教育の問題は厚労省の管轄外と言われればそれまでだが。

であれば厚労省のプロジェクト立案者と、わが子の誕生を喜ぶ男性の間には、子育てのとらえ方にかなりギャップがあると言わざるを得ない。

高まる母親から父親への不満

0~6歳の乳幼児を育てる父親に聞いたところ、「自分は妻に必要とされている」と自覚している父親の比率は77.6%(2014年)だった(ベネッセ教育総合研究所)。じつはこの数値は91.2%(2005年)、81.5%(2009年)、というように徐々に低下傾向にある。これはちょっと驚きの数値ではないだろうか。

また2020年4月、こんな記事が朝日新聞に掲載されていた。

「働いてくれていた方がよかった」。関東地方に住む40代の女性は、夫の育休が「過酷だった」という。夫の「育児」は、上の子を保育園に送ることくらい。帰ってくるとテレビの前でごろ寝した。お昼になると「ご飯はどうする?」。夫が自ら近くのスーパーに買い物に行くという発想もなかった。
朝日新聞2020年4月4日朝刊

記事には、育休を取り、「家事育児を担っている」と周囲にアピールしながらも、積極的に子育てをしない父親たち、それに不満を募らせる母親たちの証言が紹介されていた。

「取るだけ育休」に苦しむ母親たち

またSNS上では「取るだけ育休」に苦しむ母親たちの声が溢れているという。それを裏付けるように、母親のための育児アプリを運営する「コネヒト」が日本財団と共同でインターネット調査を行ったところ、育休を取得中の父親の家事・育児の時間が1日あたり2時間以下だった人が32.3%にも上ったという(2019年、母親約500人に尋ねた結果)【男性の「とるだけ育休」を防ぐための提言(「変えよう、ママリと」)】。

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これをどう考えればいいのだろうか。

博報堂生活総合研究所が行った「家族調査」では、「夫も育児を分担する方がよい」と答えた父親は88.9%(2018年)で、10年ごとの推移を見ても過去最高を記録している(1988年45.8%、1998年66.3%、2008年83.5%)。これは大きな変化だと言えるだろう。

そうすると、父親は参加する気持ちはあるのに何らかの理由で実行できないのか、あるいは父親の行動と母親の期待との間にズレがあり母親が不満を溜めているのか、そこを検討してみる必要がある。