Twitterで「精子を提供する」という男性と「子供を作りたい」という女性が出会い、トラブルになっている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「探す側、提供する側、双方が高い匿名性を求めてTwitterを利用している。だが、あまりにリスクの高い行為だ」という――。

「昨年は5件妊娠報告をいただきました」

Twitterで「#精子ドナー」「#精子提供」「#精子バンク」を検索すると、「東大卒」「中肉中背」「身長は175センチ」「一流企業勤務」「スポーツ歴はサッカー」「持病、性病なし」などの言葉が並ぶ。中には「昨年は5件妊娠報告をいただきました」などと、実績をうたっている投稿もある。提供する男性側とみられるアカウントが目立つが、「情報を求める」とする女性側のアカウントも入り交じっている状態だ。

画像提供=高橋暁子
「精子提供を行っている」という投稿の中にはこれまでの実績のほか身長、体重、IQの紹介をしているものも

針のない注射器「シリンジ」を使い、精子を体内に入れることを「シリンジ法」という。「タイミング法」とは、排卵のタイミングに合わせて性行為をすることだ。提供するという男性アカウントには、「シリンジ法、タイミング法どちらもOK」など、性行為をちらつかせているものも少なくない。

「(Twitterは)いかにも怪しい投稿が多いから、使いたいとは思わない。でも、もしずっと妊娠しないままだったら、最後の手段として試したい気持ちになったかもしれない」。最近、長い不妊治療を経て、無事出産をしたある40代女性はいう。「何度もダメだと心が削られる。どんな手段でも試したい気持ちはわかる」

独身日本人を名乗った男性は既婚中国人

一方、SNSを介して精子提供を受けて、トラブルになっているケースもある。SNSで知り合った男性から精子提供を受け、子供を出産した30代女性が昨年末、約3億3000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したというニュースが話題となった。

女性は、男性が京大卒の日本人で、独身で交際相手もいないと信じた上で、性交による精子提供を受け、妊娠出産していた。ところが、男性は中国籍で別の国立大を卒業しており、既婚者だったことが判明。精神的苦痛を受けたなどとして提訴に踏み切ったというのだ。生まれた子供は児童福祉施設に預けられているという。

これは裁判にまで発展した異例のケースかもしれないが、SNSで連絡を取り合って交渉し、精子提供を受ける行為が実際に行われているのが今の日本の実態だ。