「いきなり書類を持って来られても、こちらも迷惑なんですよ」

確かに、手続きを相続センターなどに一本化した方が効率はいいです。しかし、高齢者がいきなりセンターに問い合わせをするでしょうか。やはり、まずは窓口を訪れる人が圧倒的多数だと思います。

課題に直面した高齢者は、ただでさえ不安や悩みを抱えています。そんな中で、けんもほろろに対応されてしまえば、その精神的ダメージは計り知れません。

かく言う筆者も、これまで手続きで無意味に長時間待たされたり、不合理な対応を受けたことがあります。成年後見人として本人の病院代を下ろす際に、病院の請求書を見せるようにと言われたことがあります。後見人は、正当な権限により支払いなどの財産管理を行うので、本人に関する請求書を見せる理由はまったくありません。

またある時は、依頼者の代わりに預貯金の解約をしようとした際に、上席と思われる担当者から開口一番「いきなり書類を持って来られても、こちらも迷惑なんですよ」と、それこそいきなり言われたことがあります。あまりの横柄さに、「それなら、事前予約が必要と店舗に貼り出されたらいかがですか?」などと返しました。

さすがにまずいと思ったのか、「先生、いい時計をつけていますね」と態度を軟化させました。ちなみに、筆者の時計はロレックスなどではありません……。

岡信太郎『財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策』(ポプラ新書)

現在、どの銀行も相続手続きを相続センターに一本化する傾向にあります。しかし、窓口に行けば手続きができると考えている人は依然として多いです。センター経由となることや手続き完了までに一定期間かかることをもっと広く告知すべきではないでしょうか。

最近では、認知症になっても家族が預金を引き出せる商品があります。しかし、これもあくまで本人が認知症になる前に代理人を設定しておく必要があります。こちらについてもメリットとデメリットを広く提示することが求められます。

ようやく金融機関の方でも認知症に対応しようという動きが出ています。認知症対応のための新たな資格を金融機関が導入すると発表されました。

肩書だけで終わらないよう、しっかりと顧客に寄り添ってほしいところです。

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