SEなのに資料作りで忙殺

たとえば、ITのエンジニアなのに、報告書をつくるだけでなく、その報告書を印刷製本するために半日をとられる。

たとえば、情報システム部門のSEとして入社したはずなのに、調整ごとや会議運営、報告資料の体裁を整える作業やらで忙殺される。

たとえば、マネージャーとして部下の指導だけでも手一杯なのに、職場にあるすべてのUSBメモリの型番や用途を調べるように命じられ、本業で成果を出す前向きな仕事に取り組む時間がほとんどなくなった……。

私自身、こうした雑用に追われていた時、スウェーデンの取引先の担当者からこう質問されたことがあります。

「なんで、そんな仕事までYouがやっているの?」

海外の企業では、人を雇うことはその人が持っている専門性を買うことであり、求められるのはその専門性を活かして成果を上げることだと考えています。前述のような専門以外の仕事をやるように指示されることはありません。仮に「これをやるように」と指示されたら、「それは自分の仕事ではない」と拒否するはずです。

しかし、日本の企業の場合は、「働く人の時間を買う」感覚が強いうえに、「会社の言うことは絶対」です。指示された仕事が自分の不得意なものであろうが、専門外であろうが、やれと言われたらつべこべ言わずにやるのです。

他にも上司に付き合って残業をしたり、上司や同僚のミスのしりぬぐいをしたり、あるいは上司や同僚と一緒にお酒を飲むのも仕事のうちであるのが日本の職場の考え方です。これらを含めて苦労と呼び、そのような苦労を経て初めて日本の職場では評価され、出世につながるのです。

ムダな仕事が多すぎる

たしかに、このような苦労ならしたくないと考えるのも無理ありません。

しかも、これほどに専門外の雑用が多くては、成長したいと考えているにもかかわらず、プロがプロとして成長できない職場になってしまいます。それどころかプロとしての能力を低下させ、誇れるキャリアを築けないわけですから、プロ意識が高い人ほどこうした職場にはイライラしますし、職場がギスギスします。

さらに、介在会社が余計な仕事を増やします。

たとえば、イベントの企画会社が出演者にイベント出演への依頼をしたとします。出演者はどこの会社の案件かを知りたいわけですが、なぜか企画会社は客先に忖度そんたくして名前を出そうとはしません。

出演者は「それでは出るかどうか返事ができない」となり、ムダなコミュニケーションが増えたり、仕事先との信頼関係まで悪化したりします。

似たようなストレスは、請負型のIT企業の職場でもよく発生しています。間に入っている会社がお客さまにいい顔をしたいのか、実際には望んでもいない報告書の作成を依頼するなど、とにかく余計な仕事を増やすのです。

このように介在会社が入るケースでも入らない職場でもそうですが、日本の職場ではムダな仕事が多すぎるきらいがあります。

写真=iStock.com/settaphan
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