カード会社に利益をもたらすのは「両極端の顧客」

一方でカード会社やQRコード決済事業者は獲得後の会員のもたらす利益についてかなりしっかりと把握しています。獲得はスピード優先の競争なのでとにかく大盤振る舞いになる一方で、利益の刈り取りは時間をかけながら緻密な分析に基づいてというやり方です。

私の知っている例で一番大規模なのがアメックスの例で、全世界で一年間に数百億円の上の方のプロモーションコストをかけて新規顧客を獲得します。でも後から調べてみると、お金をかけて獲得した新規客がたいして利益を出していないことがわかったりします。そこで翌年のキャンペーンの予算配分を百億円単位で変えたりするわけです。

「去年は新規入会で3万円もらえたのに、今年は5000円に改悪されている」

と感じるケースの背景には、だいたいこの緻密な分析があります。楽天のゴールドカードの還元率が一般カードと同じになったという事実から類推されるのは、楽天のゴールドカード顧客が楽天に対して十分な利益をもたらしていないということでしょう。

一般的にクレジットカードの顧客は両極端が儲かります。年間数百万円単位でカードを使ってくれる人は、加盟店からカード会社が徴収する決済手数料が数万円から十数万円になります。一方で、あまりお金がないからカードはリボ払いという顧客層は金利が稼げるので、やはりカード会社は儲かります。その中間で、ゴールドのサービスを受けながらあまりカードを使ってくれない顧客が多ければ、サービスが改悪されるのは仕方ないかもしれません。

写真=iStock.com/Deejpilot
※写真はイメージです

ヤフーとの顧客獲得競争が終了した

さて、還元ポイントが改悪されるケースには大きく二通りあります。顧客獲得競争の段階が終了した場合と、競争の焦点がそこから違う場所に変わった場合です。

楽天がSPU(スーパーポイントアップ)を始めたのはヤフーとの顧客獲得競争が激化したことがきっかけです。それまでインターネットショッピングの楽天市場と、オークションサイトのヤフオクは市場をすみ分けていたのですが、ヤフオクにショップが出店するなど、だんだん境界があいまいになってきました。

そのときにヤフー側がしかけたのは、楽天市場からヤフーショッピングへの顧客スイッチ戦争です。出店料をゼロにして楽天市場に出店しているお店に対して「ヤフーにも出店してください」とお願いして出店状況を楽天と同じにしたうえで、ソフトバンクユーザーなら買い物のポイント還元が最大20%になるという大盤振る舞いを始めたのです。

それに対抗する形で楽天のポイント還元率も上がったのですが、戦争がある程度進んだ段階で楽天市場からヤフーショッピングへの顧客流出は収まってきます。これはポイント経済圏の特徴です。