「無料でセレブな海外旅行をするYouTuber」のノウハウ

最初の事例です。アメリカで登録数が多い、YouTubeの人気チャンネルジャンルに無料でセレブな海外旅行をするというものがあります。アジア人の若くてカリスマ風のYouTuberが「今日は無料航空券でドバイにきました」とか「うわー素敵なスイートルームです。今回も無料で泊まります」みたいに話しながら、普通なら体験できないようなセレブな海外旅行を繰り広げます。

あるYouTuberの場合、番組内でノウハウを細かく紹介しているのですが、彼がやっていることは20枚ぐらい持っているクレジットカードをエクセルシートで管理して、プロモーションでもらえるベネフィット(ポイントやクーポンや無料招待の合計)が最大になるように作戦を細かく立てるのです。

日本でも特定のサイト経由でクレジットカードに申し込むと多額のポイントがもらえるサービスがありますが、海外の場合、クレジットカードの獲得競争が激しい国では数万円単位のポイントや無料航空券がついてくるのです。ポイントも通常のカードでは利用額の0.5%が普通の水準ですが、入会直後の期間ではこれが3%になったりする。彼はそういったメリットを全部活用して無料海外旅行ライフを満喫し、それをYouTuberとして配信することでさらに儲けているわけです。

浜辺のブランコに乗って休暇を楽しむ旅行客
写真=iStock.com/SHansche
※写真はイメージです

とにかく客を集めることが、利益の最大化につながる

さてクレジットカード会社側に話を聞くと、彼のようなユーザーが一番儲からないと口をそろえて言います。だったら入会審査で彼を落とせばいいのですが、それはしません。なぜなら彼はクレジットカード会社にとって格好の宣伝マンになっているからです。

そもそもなぜクレジットカード会社が豪華なベネフィットで新規顧客を釣るのでしょうか。カードでたくさん買い物をする人を囲い込むことがカード会社の利益になるからです。大量に網をかけることでそういう人を集めるには、大盤振る舞い戦略が一番効率がいいのです。

つまり確率的に儲からない客も一定数網に入ってくることがわかっているけれども、とにかく大量に集めることが会員獲得による利益を最大化させるという考えです。

ここ数年でいえばクレジットカードよりもQRコード決済の大盤振る舞いが話題になりました。キャッシュレスでコード決済するたびに20%還元などという景気のいいキャンペーンが打たれていた裏事情としてあるのは、とにかく大盤振る舞いして顧客数を多く獲得した方が勝ちだという考えです。