企業物価指数は前年同月比で6.3%も上昇

穀物以外の農産品価格も上昇している。その一つがパーム油だ。需要面で、パーム油はマーガリンや揚げ油に使われる。パーム油はバイオディーゼルの原料にも使われ、脱炭素を背景に需要増加が期待される。その一方で供給面では、主要生産国であるマレーシアで、感染再拡大によって外国人労働者の入国が減り、生産が減少した。原油価格の上昇やタイト化する需給環境を背景に、パーム油価格は過去最高値圏で推移している。

基礎資材の価格も高い。エネルギー資源などの価格上昇や、石炭不足を背景とする中国での電力供給体制の不安定化を背景に、塩化ビニール樹脂や、生産工程で大量の電力を消費するアルミなどの非鉄金属などの価格が上昇している。

その結果、世界的に企業間で取引されるモノやサービスの価格が上昇した。9月、わが国の企業物価指数は前年同月比で6.3%(速報値)上昇した。主な要因は、電気料金や石油関連製品、木材の価格上昇だ。

パスタ、マーガリン、パンなどが値上がりしている

徐々に、わが国にもインフレの波が押し寄せている。企業は消費者に販売するさまざまなモノの価格を引き上げ始めた。10月下旬時点でレギュラーガソリン価格は1リットル当たり160円台後半にまで上昇し、一部地域では170円台に突入し始めた。これまでの天然ガス価格の上昇によって、追加的な電気料金の上昇も視野に入る。10月以降は、パスタ、マーガリン、パン、コーヒー豆、ポテトチップスなどが値上げされている。資源、資材価格の高騰によって増えたコストを価格に転嫁せざるを得ない企業は増えている。

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国内の小売関連のデータを確認すると、感染再拡大によって先送りされた需要(ペントアップ・ディマンド)の発現の勢いが鈍い。富裕層の支出意欲は比較的しっかりしているが、それ以外の大多数の所得階層で物価上昇への警戒感は高まり、生活を守ろうとする家計が増えているようだ。例えば、感染再拡大が落ち着いたにもかかわらず、百貨店販売の戻り方は想定されたよりも弱い。国内旅行も持ち直しているが、コロナ禍以前の水準には達していない。物価上昇に加えて、さらなる感染再拡大への警戒もあるだろう。